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「大阪本店・国会支店」――維新の会の逆転の発想は「時代の目覚まし」となるか

菅沼栄一郎 朝日新聞記者(地域報道部)

 大阪維新の会の国会進出は「候補者300人で200人の当選を目指す」ことばかりが強調されているが、橋下徹代表(大阪市長)や松井一郎幹事長(大阪府知事)ら党三役ばかりでなく、100人余りの同党所属の府議や市議も、原則として衆院議員選挙には立候補しないことは意外と知られていない。

 2011年のダブル選や統一選で大阪都構想の実現を掲げて当選したからには、首長、地方議員として初志を貫徹。代わりに国会へは公募した維新政治塾の卒業生を送り込む。言ってみれば、「本店」はあくまで大阪に置き、国会の支店にスタッフを派遣する。国会に議席を持つことになれば、政党としては異例のスタンスとなる。

 やせ我慢も伺えるが、本格的な地方分権を目指す地域政党として、「地方と中央が対等であることを身をもって示す」(幹部)との狙いもあるようだ。同党は「カネをかけない選挙を実践する」とも表明しており、自己資金による立候補を原則とする同党のシステムがどこまで機能するかも注目点だ。骨格が示された「船中八策」には、参院廃止や首相公選制など、刺激的なテーマが盛り込まれており、次期総選挙の論戦はこれまでになく多元的な論点で闘われることになりそうだ。

 松井幹事長は、「大阪を変えるという約束で選んでいただいたわけだから、原則は全員(国会に)いかない」と断言する。もっとも、「最低限の抑えは必要」ともいい、少数の現職地方議員の立候補に含みも残す。

 一方で、橋下代表は「これまでの国会議員が、国の権限を削る分権政策を積極的に進めるとは思えない」と発言してきた。確かに、政権交代を果たした民主党の掲げた「地域主権」はほとんど見るべき実績を残していない。政府の出先機関の廃止について、野田政権は霞が関官僚の抵抗を押さえきれず、法案の方向もなお定まっていないことが、「分権への及び腰」を如実に示している。これに対し、橋下氏ら関西広域連合は、出先廃止・地方移管の実現を強く求めている。

 地方分権は、有権者にとって耳障りがいいため、民主党も自民党も公約に掲げてきたが、どの政権も総論ばかりで実質が伴わない結果に終わる場合が少なくなかった。地方に軸足を置くことにこだわる地域政党が国政に大規模に進出する事態になれば、分権の進展にも新たな展開が期待できるかもしれない。

 大阪維新の会のもうひとつのポイントは

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