メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

「増える」ドイツ系アメリカ人――「ホット・ドッグ」は「フランクフルター」になるか?

高橋和夫 放送大学教養学部教授(国際政治)

 3月6日にブルームバーグがネットで配信した記事によれば、ドイツ系アメリカ人が増えている。といっても絶対数が増えているわけではない。自らをドイツ系と認識し、そう公言する人々が増えているだけである。ドイツ系市民は、過去10年間で600万人増え、4980万人となった。これはラテン・アメリカ系であるヒスパニックの5050万に次ぐ数字である。

 ドイツは第一次と第二次世界大戦でアメリカの敵国だった。またユダヤ人虐殺の責任を問われた。こうした理由からドイツ系の人々は、自らのルーツを強く主張することは控えてきた。

 また白人であり、多くがキリスト教のプロテスタントであるドイツ系移民は、WASP(White、Anglo Saxon、Protestant 白人でイギリス系でプロテスタント)が「主流」の社会に自らのドイツ性を埋没させることが可能であった。肌の色ではイギリス系だろうがドイツ系だろうが区別がつかないからである。第二次世界大戦中に収用所に送り込まれた日系人との違いである。またドイツ系の人々は余りに多く、全員を収容所に送り込むなど不可能であった。

 ドイツへの敵意というのは、たとえば食べ物の名前に現れた。一説によれば、アメリカ人が大好きなパンにソーセージをはさむサンドイッチは、ドイツから持ち込まれ、当初はフランクフルトとかフランクフルターと呼ばれていた。

 しかし第一次世界大戦でドイツがアメリカの敵国となると、名前をホット・ドッグへと変えられた。

・・・ログインして読む
(残り:約644文字/本文:約1268文字)