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ミサイル迎撃の課題――日米共同対処を確実に

小谷哲男

小谷哲男 小谷哲男(NPO法人岡崎研究所特別研究員)

 北朝鮮が4月12日から16日の間に「人工衛星」の打ち上げを予告しているが、実際には弾道ミサイルの発射実験であることは間違いない。打ち上げが行われれば、一連の国連安保理決議に違反し、2月の米朝合意にも背くことになる。

 しかし、15日は金日成元主席の生誕100周年でもある。この実験は、若く経験の乏しい金正恩・労働党中央軍事委員会副委員長が戦略部隊であるミサイル指導部を掌握し、総書記に就くために必要な国内手続きであると考えられ、外交的圧力により中止させることは難しい。

 発表されている打ち上げ軌道は、これまでとは異なり南向きで、切り離しロケットの第一弾が黄海に落下し、第二弾は先島諸島上空を越えてフィリピン東方沖に落下する。このため、政府は3月30日に破壊措置命令を発令し、ミサイル防衛システムの配備によって万が一の実験失敗に備えている。政府が進める南西諸島防衛の実働演習として、また、防衛大綱が打ち出した「動的防衛力」の実践として、今回の措置は重要である。

 北朝鮮のミサイル実験はこれまで東北地方上空を越えて東向きで行われてきたが、今回初めて南向きであるため、南西諸島をミサイルの脅威から守る課題を検討する上で貴重な機会となる。また、ミサイル防衛の統合任務部隊を指揮する航空総隊司令部が3月末に在日米軍司令部のある横田基地に移転したばかりで、日米共同統合運用の試金石ともなる。

 とはいえ、実際に迎撃が必要となる事態が生起する蓋然性は非常に低い。また、そもそも日本のミサイル防衛システムは、今回のように日本を飛び越える飛翔体の迎撃ではなく、日本を狙ったミサイルの迎撃用である。また、ミサイルそのものではなく、落下してくる部品を迎撃するような事態はミサイル防衛では想定されていない。

 注目すべき点は、

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