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薄熙来氏解任後、中国共産党に問われるもの

藤原秀人 フリージャーナリスト

 英国の詩人バイロンは「事実は小説よりも奇なり」という言葉を残した。その通りの奇妙不可思議なことが中国で起きた。薄熙来事件である。

 中国共産党の重慶市委員会トップの書記だった薄氏(62)が3月15日に解任された際、私はWEBRONZAに「闘争の終わりか、始まりか」と書いた。だが、5年に一度の秋の党大会で決まる指導者人事に向けて、薄氏解任劇がどう展開していくかは見通すことはできなかった。

渦中の薄熙来氏

 権力闘争の実相はなお明らかでないが、はっきりしたのは中国の権力者が本当に汚れきっていることだ。

 渦中の薄氏は4月に入って、政治局員と中央委員の職務も停止された。事実上の解任である。国営新華社通信は10日、「薄氏が重大な規律違反の疑いで調べを受けている」と伝えたが、それよりも薄氏の妻が英国人実業家殺害容疑で取り調べを受けていることが明らかになったのが衝撃的だった。

 薄氏の妻で弁護士の谷開来氏と、薄家で働いていた張暁軍氏の2人には、英国人実業家ニール・ヘイウッド氏(当時41)を殺害した疑いがあるというのだ。

 ヘイウッド氏は1989年に訪中し、中国人の妻の紹介で弁護士の谷氏と知り合った。薄氏の長男、薄瓜瓜氏に英語を教え、自身の母校である名門ハロー校への進学を手伝うなど家族ぐるみの関係を深めた。彼はコンサルタント業も始め、薄氏と外国高官との面会も取り持った。谷氏とはビジネスパートナーという関係でもあった。

 そのヘイウッド氏は昨年11月、出張先の重慶のホテルで遺体で発見された。

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