菅沼栄一郎(すがぬま・えいいちろう) 朝日新聞記者(地域報道部)
朝日新聞記者 1955年11月27日生まれ。80年、新聞記者に。福島支局、北海道報道部、東北取材センターなど地域を歩く。この間、政治部で自民党などを担当。著書に『村が消えた――平成大合併とは何だったのか』(祥伝社新書)、『地域主権の近未来図』(朝日新書、増田寛也・前岩手県知事と共著)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
5月5日に北海道の泊原発が定期検査に入り、50基(福島の4原発は4月19日に廃止)の原発は全て止まる。政府や電力会社は「原発ゼロの日本列島」に国民がなじんでしまうことをなぜかひどく嫌っており、「一瞬」(枝野幸男経産相)の間に再開させたいようだ。
そこに待ったをかけたのが、大阪府市エネルギー戦略会議(=「チーム・ハシモト」と名付けようか)だ。「原発から100キロ圏内の府県との安全協定」などを求めた「8提言」を突きつけた。電力会社が詳細を公表しない電力供給データなど「原発の闇」をめぐる「チーム」とのバトルが本格化する。
朝日新聞デジタル版「追跡 橋下改革」(4月19日付)によると、元経産官僚の古賀茂明氏ら10人のチームは、「橋下氏の教育改革は支持できない」(大島堅一・立命館大教授)としたり、「橋下氏が掲げる脱原発依存では、原発をなくすスピードが遅い」(河合弘之・脱原発弁護団全国連絡会代表)と批判するなど橋下氏とは見解の異なる論客もいるが、現状のエネルギー政策を転換する方向では一致する。
メンバーの一人、飯田哲也・環境エネルギー政策研究所長は、「2010年並みの猛暑の夏になったら18.4%の電力が不足する」とした経産省の試算に反論、「5%の余裕がある」とする試算を発表した。飯田案は、原発事故で節電を体験した2011年の需要量を使うべきとしたうえで、関電の火力や揚水発電を最大限活用し、中部・北陸・中国電力から融通すれば、原発なしでも猛暑の夏を十分にしのげると反論する。
これに対し、関電は23日、「節電をしても8月はなお16.3%不足する」との新たな見通しを公表。飯田氏は、夜間の余剰電力を使う揚水発電や節電効果はさらに多く見込まれるとして「もっと賢い節電がいくらでもある。供給は確保できる」と再反論した。
本当に、夏の電力は、とくに関西で、不足するのか。ポイントは「節電と融通」だ。企業向けの「需給調整契約」=電力が多く使われる時間帯に節電すれば割引される契約=をより活用できないか。夏でも比較的余裕があるとされる隣接の電力会社から補充できないか。とくに、「融通」は結果として「地域独占」を崩すことにつながりかねないため、電力会社が最も避けたい手段とされる。電力会社の資産や給与などの売却・削減が徹底されているかもいまひとつわからない。
橋下氏は関西電力の「9%株主」として、こうした「原発の闇」の公開を迫ってきた。しかし、なお電力会社の情報公開が十分かどうか、関係知事からも指摘される。情報公開がうやむやのままで「原発ゼロ」が素通りされるならば、こうした電力会社の体質が温存されることにならないか。
「8提言」には法的には何の強制力もない。そもそも大飯再稼働には地元の「同意」は必要としない。だから、連休明けに大飯町の2基の原発はあっさり再稼働するかもしれない。
しかし、
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