メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

嘉田由紀子・滋賀県知事 政府は7提案に誠実に応えよ

WEBRONZA編集長 矢田義一

日本記者クラブで語る嘉田由紀子・滋賀県知事

 福井県の関西電力大飯原発3、4号機の再稼働が争点になるなか、福井県に隣接する滋賀県の嘉田由紀子知事は8日、東京・日比谷の日本記者クラブで講演。京都府の山田啓二知事とともに4月27日に打ち出した原子力政策への7項目の提言について政府は誠実に応えるべきだと改めて強調した。今の政府の姿勢では地元の信頼を得ることは難しいとの認識も示した。この問題では、経産省が二回にわたって回答を両府県に提出したが、両府県は納得していない。

 両知事による7項目の提案は、以下の通りだ。

(1)中立性の確立

 政治的な見解ではなく信頼のおける中立的な機関による専門的な判断を求める。更に、確固たる安全対策づくりに向けて、地元自治体と地元住民参加の仕組みの創設を図り、安全性を住民とともに追求する意識の醸成を図るべきである

(2)透明性の確保

 国民の納得できる情報公開を

(3)福島原発事故を踏まえた安全性の実現

 免振事務棟、防潮堤などの恒久的な対策ができていない段階における安全性の説明

(4)緊急性の証明

 事故調査が終わらない段階において稼働するだけの緊急性の証明を

(5)中長期的な見通しの提示

 脱原発依存の実現の工程表を示し、それまでの核燃料サイクルの見通しを

(6)事故の場合の対応の確立

 オフサイトセンターの整備やマックス2、スピーディーなどのシステムの整備とそれに伴う避難体制の確立を

(7)福島原発事故被害者の徹底救済と福井県に対する配慮について

 東京電力はもちろんのこと、国においても福島原発事故被害者に責任を持って対応するとともに、福井県の今までの努力に対し配慮を

100人ほどの記者らが熱心に耳を傾けた

 嘉田知事は、この7項目を説明しながら、とりわけ中立性や透明性の観点から政府の現在の姿勢は到底納得できるものではないと指摘。県が大飯原発の万一の事故を想定し、事故時の放射線拡散を予測するシミュレーションをするためにスピーディのデータを国に求めたが今も提供されていない事実を踏まえ、「人心を混乱におとしめるようなデータを出すべきではないという行政・官僚機構の不作為、リスク公表への及び腰体質が露呈した。これは日本中に巣食う問題だ」と述べた。

 また、滋賀県が2011年11月に公表した、同県による災害想定の見直しに伴う放射性物質の拡散予測などをシミュレーションした結果を改めて説明しつつ、実際の避難の困難さなどを訴えた。同県は環境放射線モニタリング体制の整備を急いでおり、モニタリングポストの配置案をつくったが、「あくまでも案の段階で、今は測定さえできない」と強調。万一の場合に地元で放射線水準の調査測定さえできない状況での再稼働を強く牽制した。

 さらに、政府が原発を抱える地元との適切なリスクコミュニケーションをとっていないことへの不満も表明した。

 嘉田知事が再姿勢を急ぐ政府に慎重さを求める背景には、琵琶湖という関西圏の巨大な水がめをあずかる首長としての認識と責任感があるようだ。大飯原発の万一の事態で琵琶湖が汚染されれば、大阪、京都、兵庫などを含む計1450万人の水源が使えなくなり、関西全体が干上がってしまうという危機感も強い。昨年の東日本大震災で明らかになったように、日本が本格的な地震活動期にあるなら、なおさらのことだ。

 共同で提案した山田知事が総務省出身で全国知事会会長であることに触れ、嘉田知事が声を強めて言った。「山田知事はコンサバティブな方だ。その方との共同の提案ということを考えれば、せめてこの程度は政府は応えてほしい。切なる願いだ」「被害を受ける地元として誠意をもって発信を続けたい」