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 フランソワ・オランド氏は、フランス新大統領に就任後さっそく、相次ぐ国際会議の舞台にデビューする。57歳。社会党党首(第一書記)を10年余りつとめたが、「凡庸」「カリスマ性のなさ」といった人物評がつきまとった。ギリシャを震源とするユーロ危機の再燃の気配が強まる中、オランド氏の行く手には解決を迫られる難題が山積している。 

 オランド氏の登場が、今の欧州の時代状況を映したものであることは多言を要しない。サルコジ政権が進めた財政緊縮路線が成果を生まず、むしろ雇用不安や社会保障削減への懸念を強めた。6万人の教職員を雇用し、年金支給年齢を引き下げ、富裕層への課税を強化する。こうしたオランド氏の訴えが、格差拡大への有権者の不満を吸い上げた。

 スペイン、イタリア、ポルトガル、オランダなど、このところ、総選挙や内閣総辞職によって政権の崩壊が相次いでいる。経済と財政危機から脱却するためにどの国も財政の緊縮を進め、国民に我慢を強いざるをえない。そのことが国民の反発を招いているのだ。「右」や「左」といった政治路線はここではあまり関係がない。

 オランド氏がすぐに直面しなければならないのが、自らを権力の座に押し上げた、この「反緊縮」の民意だというのは皮肉なことでもある。

 オランド氏の唱える「成長戦略」の必要性については、欧州諸国に一定の必要性を認める声が強まりつつある。就任式典を終えたオランド氏は、ドイツのメルケル首相と会談し、欧州債務危機の克服のため仏独主導で導入した財政緊縮路線の見直しを求める構えだ。メルケル首相は緊縮見直しには難色を示しながらも、成長戦略を加える必要性は半ば認めつつある。EU(欧州連合)のバローゾ委員長らも、政策金融機関である欧州投資銀行の増資によってインフラ建設による景気刺激策を唱えている。

 5月18~19日に米国キャンプデービッドで開かれる主要国首脳会議(G8サミット)に出席したあと、オランド氏は23日にブリュッセルでのEU緊急首脳会議に臨む予定だ。ギリシャなど欧州問題が討議される中で、財政健全化と両立する枠内でオランド氏の唱える成長戦略が受け入れられる素地はあるだろう。5月20日にシカゴで開かれるNATO(北大西洋条約機構)首脳会議では、アフガニスタン問題が論点だが、オランド氏は仏軍の撤退時期を一年前倒しして年内とする考えを示す可能性がある。

 一連の国際会議の中での最大の焦点は、 ・・・ログインして読む
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筆者

脇阪紀行

脇阪紀行(わきさか・のりゆき) 大阪大学未来共生プログラム特任教授(メディア論、EU、未来共生学)

1954年生まれ。79年に朝日新聞社に入社、松山支局などを経て大阪本社経済部に。90年からバンコクのアジア総局に駐在。米国ワシントンでの研修を経て97年からアジア担当論説委員。2001年からブリュッセル支局長。06年から論説委員(東南アジア、欧州など担当)。2013年8月末に退社、9月から、大阪大学未来共生イノベーター博士課程プログラム特任教授。著書に『大欧州の時代――ブリュッセルからの報告」(岩波新書)、『欧州のエネルギーシフト』(岩波新書)。

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