2012年05月16日
陸上自衛隊幕僚監部が「火力戦闘車」の導入が必要だとしているのは牽引式155ミリ榴弾砲、FH-70の耐用寿命が迫っており、その更新も必要だからだ、としている。実際、筆者の知る限りでは既にFH-70の、特に駆動系が耐用寿命を過ぎており、予算不足でオーバーホールもままならないので稼働率はかなり落ちている。
だが費用対効果と、優先順位を考えるのであれば旧式化したFH-70の延命化というオプションを考慮すべきだ。実はFH-70はまだ充分に使用が可能だ。
陸自は幸か不幸か実弾演習が少ない。しかも最大射程で訓練を始めたのはここ数年のことだ。これは米国のヤキマの演習地で少数のFH-70で実施しているのみだ。当然ながら榴弾砲は長い射程を得るために、多くの装薬を使うとその分、砲身の寿命が減る。
ゆえに射撃の回数が少なく、長射程でほとんど撃たない陸自のFH-70の砲身寿命はかなり残っていると考えられる。
FH-70は約480門が調達され、そのうち約400門が残っている。前回述べたように防衛大綱で定められた火砲の定数約400門からMRLS、99式自走榴弾砲の数を引くと、FH-70の更新に必要な新型火砲の枠は約170輌程度しかないことになる。仮にそのうち50~100輌が超軽量砲などの牽引砲で置き換えるとすると、「火力戦闘車」のは枠70~120輌にすぎない。この程度の数量の火砲を開発し、製造すればコストは極めて高くなるのは火を見るよりも明らかだ。
まずは超軽量砲やMLRSの後継の調達を優先し、その間はFH-70を延命し、その間に本当に「火力戦闘車」が必要かどうか、検討すればよい。
FH-70の最大の問題は
有料会員の方はログインページに進み、朝日新聞デジタルのIDとパスワードでログインしてください
一部の記事は有料会員以外の方もログインせずに全文を閲覧できます。
ご利用方法はアーカイブトップでご確認ください
朝日新聞デジタルの言論サイトRe:Ron(リロン)もご覧ください