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火力戦闘車の開発は必要か(3)――費用対効果と優先順位

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 現在の防衛予算の状況に鑑みれば、超軽量砲の調達やMLRS(Multiple Launch Rocket System、多連装ロケット発射システム)の更新、「火力戦闘車」の開発調達を同時に行うのは不可能だ。

 陸上自衛隊幕僚監部が「火力戦闘車」の導入が必要だとしているのは牽引式155ミリ榴弾砲、FH-70の耐用寿命が迫っており、その更新も必要だからだ、としている。実際、筆者の知る限りでは既にFH-70の、特に駆動系が耐用寿命を過ぎており、予算不足でオーバーホールもままならないので稼働率はかなり落ちている。

 だが費用対効果と、優先順位を考えるのであれば旧式化したFH-70の延命化というオプションを考慮すべきだ。実はFH-70はまだ充分に使用が可能だ。

FH-70は近代化を施せば、まだ充分に一線での使用が可能だ=筆者提供

 陸自は幸か不幸か実弾演習が少ない。しかも最大射程で訓練を始めたのはここ数年のことだ。これは米国のヤキマの演習地で少数のFH-70で実施しているのみだ。当然ながら榴弾砲は長い射程を得るために、多くの装薬を使うとその分、砲身の寿命が減る。

 ゆえに射撃の回数が少なく、長射程でほとんど撃たない陸自のFH-70の砲身寿命はかなり残っていると考えられる。

 FH-70は約480門が調達され、そのうち約400門が残っている。前回述べたように防衛大綱で定められた火砲の定数約400門からMRLS、99式自走榴弾砲の数を引くと、FH-70の更新に必要な新型火砲の枠は約170輌程度しかないことになる。仮にそのうち50~100輌が超軽量砲などの牽引砲で置き換えるとすると、「火力戦闘車」のは枠70~120輌にすぎない。この程度の数量の火砲を開発し、製造すればコストは極めて高くなるのは火を見るよりも明らかだ。

 まずは超軽量砲やMLRSの後継の調達を優先し、その間はFH-70を延命し、その間に本当に「火力戦闘車」が必要かどうか、検討すればよい。

 FH-70の最大の問題は

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