2012年06月30日
55年体制においては、政治や政策は、インナーサークルにいるプレーヤー、特に行政(官僚)、政治家や財界・業界の人々が、国民から見えないところで、ある時には話し合い、ある時には競合して、自分たちだけで決めていたのだ。
そしてその一部、特に政策形成の最後の部分だけ、メディアを通じて国民に知らせていた(実は、その方向性や結論は決まっていたが、まだ動いているかのような様子を、野球のゲームか何かを見せられているかのように国民をある意味錯覚させていた)。国民は自分も政治や政策形成に何となく関わっている、あるいは関われないが見ている気にさせられてきたのだ。
そこでは、政治家(議員)がいかにも政治や政策形成に大きく関わっているように見えるが、一部を変更しているだけで、その中心を担っているのは実は行政(官僚)であった(注1)。そのような状況を、ある人は「観客民主主義」とか「劇場型民主主義」などと呼んだりしている。
ここで総理は、行政や議員、業界などという政治や政策に関わるインナーのプレーヤーにのみ向けて説明し、了解を得れば、政策を決定できた。極論すれば、総理は、行政がつくり、根回しした政策や政治の方向性を、議員や業界に示すだけでよかったのだ(注2) このようなことを見ていくと、野田総理は、行政、特に財務省や経産省などの描くシナリオに乗り、議員などのインナーサークルのプレーヤ―にのみ働きかけて動いていると言える。その意味で、野田さんは、まさに55年体制的観点からすると、素晴らしい総理だと思う。
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