2012年07月06日
カルザイ大統領は、アフガニスタンが自らの命運に責任を持つ準備はできているものの、息の長い支援が必要だと述べるだろう。一方、日本を含む援助国や援助機関は、汚職対策の重要性を指摘しつつ、今後の協力と多額の資金援助を約束するだろう。
さて、こうした政策立案の中心にアフガン国民がすえられなくてはならないのは、指摘するまでもない。肝要なのは、アフガン国民が安心して生活を送れる治安を確保した上で、人間の基本的ニーズを援助の焦点にすることだ。つまり、もう一度「人権」重視を誓うことが必要とされているのである。
ヒューマン・ライツ・ウォッチが入手した「アフガニスタンに関する東京会合」(アフガン復興支援会議)の宣言案には、選挙、汚職対策、統治などの分野に関してはアフガン政府の責務(コミットメント)が盛り込まれている。しかし、人権に関するコミットメントは皆無だった。この数十年のアフガニスタンの歴史が、人権侵害の歴史と言っても過言でないことに鑑みれば、これは驚くべき切り捨てと言わざるを得ない。アフガニスタンの人権状況は、今も間違いなく重大な危機の中にあるのに。
もちろん、全体的な人権状況は2001年のタリバン政権崩壊以来、改善の方向に向かっている。妊産婦と幼児の死亡率は減少し、学校に通う子どもたちの数は増加した。雇用、移動の自由、公職分野への女性の参画が進み、メディア活動も活発になった。
とはいえ、アフガニスタンは、人権に関する指標のほとんどで、世界最低水準に位置したままである。アフガニスタンの少女の半分は今も学校に通っていない。高校まで卒業できるケースはほとんどない。妊産婦の死亡率も世界最悪水準のままだ。学校の襲撃も日常茶飯事。
タリバンは、一般市民を危険にさらす戦術をとるだけでなく、往々にして意図的に一般人を攻撃対象に据える。例えば、女性が公職に就くと、あるいは単に自宅外で働いただけでも、タリバンの脅迫の対象となり、時には暗殺されてしまう。女性に対する暴力撤廃法が2009年に成立したものの、今に至るも、加害者たちはほとんど処罰もされないのが現状だ。しかも、約400人にものぼる女性や少女たちが「道徳犯罪」で投獄されている。その「道徳犯罪」の罪状には、家庭内暴力や強制結婚から逃れてきたことまでもが含まれている。
アフガンの女性たちは再三再四にわたり、自らの権利獲得のために闘ってきた。自国の未来に関する重要な話し合いのテーブルには、男性だけでなく女性もつかせてほしいと要求し続けてきたものの、満足する結果はなかなか得られていない。
2012年5月にシカゴで開催された北大西洋条約機構(NATO)首脳会議でも、重要な議論から女性が締め出されるという事態が繰り返された。タリバンとの和平交渉が叫ばれて久しいが、女性がおかれた現状をみれば、タリバンとの和平交渉で女性の権利が安売りされる危険性についての懸念が深まる。日本を含む援助国や援助機関は、いかなる場合であろうと、女性の権利の犠牲の上に成り立つ和平交渉は支持できないという立場を明確に表明すべきだ。
また、アフガン治安部隊は慢性的な問題を抱えている。たとえば、警察や軍が殺人、拷問、恣意的拘禁などに手を染め続けているが、
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