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「韓国国旗」が総連本部ビルにはためく日が?――凋落の朝鮮総連

小北清人 朝日新聞湘南支局長

 最盛期には250人もいたという地上10階、地下2階の巨大なビルに、いま常時来ているのは60~70人ほど。しかもその半数は、一度組織を引退した高齢者で、「遊んでいるよりまし」と月10万円ほどの給与で通っているといいます。ビルの中は節電のため真っ暗で、冷房も最小限にしているとか。

 関係者によると、朝鮮総連中央本部(東京都千代田区)の姿は、「幽霊ビル」さながら、悲惨一途の状況です。

 この土地と建物を、日本政府の関連機関、整理回収機構(RCC)が差し押さえできる決定を6月27日、最高裁が下しました。それを受けてRCCは7月10日、競売の申し立てを東京地裁に行い、地裁は12日付で競売開始を決定。総連が組織の最大拠点から立ち退かされる可能性が現実のものとなってきました。

 「先行きは不透明だ。話し合いで解決したいが、明け渡すことになるかもしれない」

 最高裁の決定を受け、傘下機関の責任者や地方本部委員長らを集めた席で、中央本部幹部はそう説明したといいます。

 靖国神社に近い、都心の一等地にある中央本部は、在日朝鮮人の大衆団体としての顔とともに、「朝鮮労働党日本支部」の工作・宣伝活動の拠点となってきました。

 すぐ近くにあるのがホテルグランドパレス。そう、あの金大中(キム・デジュン)拉致事件(1973年)の舞台となったホテルです。当時の朴正煕(パク・チョンヒ)政権批判を国外で続ける金大中氏(後の韓国大統領)が白昼、ホテルの部屋から韓国中央情報部要員によって拉致され、船で韓国に連れ戻された有名な事件です。

 金大中氏は当時、日本を拠点に反朴政権活動を本格的に展開しようとしたわけですが、彼の支援組織の背後に朝鮮総連、さらには北の金日成(キム・イルソン)政権の線があったと、北朝鮮サイドで活動した在日関係者から聞いたことがあります。

 朝鮮問題に関心を持つ人ならば、半世紀近く、この場所に存在し続けた中央本部(86年にいまのビルに建て替え)が遂になくなろうとしているという現実に、いささかの感慨を覚えない人はいないでしょう。

 総連のあまりの凋落ぶりに「いまや北朝鮮の工作機関さえ総連を当てにせず、機関それぞれが独自に総連関係者を一本釣り、情報収集させている」(総連関係者)という話です。

 バブル崩壊を受け、90年代後半から2000年代前半にかけて、朝鮮総連系の16の朝銀信組が次々と破たんしました。その莫大な不良債権のうち、「少なくとも627億円は実質的に総連への融資だった」として回収に動いたのが、破たん信組の不良債権を引き受けたRCCです。RCCは05年に総連に627億円の返還を求める訴訟を起こし、07年に勝訴します。

 ところが総連は一向にカネを返そうとしない。そこでRCCは総連の最大資産、中央本部ビルを差し押さえしようとしますが、総連側は「土地建物を管理しているのは朝鮮中央会館管理会で、総連とイコールではない」と屁理屈をこねて抵抗を続けます。今回の最高裁決定は、中央本部ビルを「総連の資産」と認めるもので、競売の道を開いたわけです。

 今のところ、2013年前半までに競売が始まるとみられますが、総連がこのビルの確保に、「あらゆる手」を駆使しようとするのは確実でしょう。ですが、土地や建物を評価する鑑定人の立ち入りを総連が阻止するのは難しい。そんなことをすれば、公務執行妨害で刑事処分は確実です。「競売」までは手続きが順調に進むとみられます。不動産評価額は、30億円ほどとみられます。

 ここからが注目です。その競売に、ひょっとして、

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筆者

小北清人

小北清人(こきた・きよひと) 朝日新聞湘南支局長

朝日新聞入社後、大阪社会部、AERA編集部などを経て現在、朝日新聞湘南支局長。92~93年、韓国に語学留学。97年、韓国統一省傘下の研究機関で客員研究員。朝鮮半島での取材歴多数。

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