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ファンボロー航空ショーで米国がオスプレイを公開した意図とメディアの問題

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 英国の航空産業のメッカ、ファンボローで行われる「ファンボロー航空ショー」は、「パリ航空ショー」とそれぞれ隔年で行われる世界最大級の航空ショーだ。ここに来れば世界の航空産業の動向がよく分かる。ファッションの世界でいえば、パリコレのような存在だ。

 今年のファンボロー航空ショー、そしてそれに先立ってこれまた英国で行われた軍用機の祭典、「ロイヤル・インターナショナル・エア・タトゥー」に米国から海兵隊所属のMV-22オスプレイが4機参加した。この参加は多分に日本を意識した米国政府の思惑があったと思われる。

拡大ナセル(エンジンを格納する筒状の部分)の角度を60あるいは75度にすれば短距離で離着陸が可能だ=撮影・筆者

 言うまでもないが、MV-22は近く沖縄に配備される予定であり、その安全性について議論が巻き起こっている。このため米国政府は少しでも日本に対してオスプレイの客観的な情報を提供し、MV-22の沖縄配備を少しでもスムーズに行いたいと考えたのだろう。

 これらを裏付ける間接的な証拠は多数ある。まず参加した機体が空軍の機体ではなく海兵隊のMV-22であること。次いで、4機もの機体が投入されていることだ。この手の航空ショーの展示に参加する場合、コストもかかるので通常、参加機は1機だ。1機の機体で地上展示を行い、その機体を飛行デモにも使用する。多くても2機が普通だ。

 同型機4機の参加は異例であると言ってよい。会場では1機が地上展示用に使用され、残りの3機を飛行デモ用としていた。1機だけだと、故障が生じた場合にデモ飛行が不可能になるためだろう。仮にデモ用の3機が故障して飛べなくとも、展示の機体を飛ばすことができる。

 仮に航空ショーにおいて故障が起き、飛行できなかったとなれば我が国の世論がそれみたことかと騒ぐのは目に見えている。つまり米国側は万全の体制を敷いてデモ飛行に臨んだと言ってよい。

 またメーカーであるボーイング社(オスプレイはベル社とボーイング社の共同開発)の記者会見でも、説明はこれまた米海兵隊のオスプレイのプログラム担当、グレック・マシュロエ大佐が行った。この手の会見で軍の関係者が喋ることは少なくないのだが、通常はメーカーの担当者やテストパイロットなどが行うことが多い。今回の会見はボーイング社のものというよりも海兵隊の記者会見、という印象を受けた。

 さらには今回、通常の地上の観客に向けてのデモフライトだけではなく、報道関係者の体験試乗も別途行われた。その中で日本のテレビ、新聞などのマスメディア関係者の比率が多かった。日本のメディア関係者に実際の機体を見てもらい、理解を深めてもらおうというものだろう。

 ところがこれが裏目に出たようだ。

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筆者

清谷信一

清谷信一(きよたに・しんいち) 軍事ジャーナリスト

軍事ジャーナリスト、作家。1962年生まれ。東海大学工学部卒業。03~08年まで英国の軍事誌Jane's Defence Weekly日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関、Kanwa Informtion Center上級顧問。日本ペンクラブ会員。著書に『専守防衛─日本を支配する幻想』『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『自衛隊、そして日本の非常識』『ル・オタク フランスおたく物語』、共著に『軍事を知らずして平和を語るな』『アメリカの落日―「戦争と正義」の正体』『すぐわかる国防学』など。最新刊に『国防の死角――わが国は「有事」を想定しているか』。

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