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オスプレイの安全性を客観的に分析し、自衛隊の採用も検討すべきだ

清谷信一

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 筆者がデモ飛行を見た限り、オスプレイの騒音のレベルは自衛隊も保有する大型ヘリ、CH-47チヌークなどに比べて小さいように思えた。ただ搭乗した人間からは機内の騒音はかなり厳しく、ヘッドセットのマイクを使わないと意思の疎通が難しく、騒音の質もヘリコプターなどと異なる、とのことだった。

 我が国では、オスプレイに対していささか感情的な批判論が横行しているように思える。例えば、開発時に一回で19名、合計30名ほどが死亡したから危険だという主張がある。だが、それならば御巣鷹山で500人を超す犠牲者を出したジャンボジェットは飛行禁止にする必要がある。一人乗りあるいは二人乗りの戦闘機ならば、死亡する乗員は一人ないし二人だ。つまりいかなる戦闘機も、乗員の犠牲者だけを考えれば、全ての旅客機よりも安全、ということになる。

 不思議なことに平和活動家の方々は、大量事故死者を出している旅客機で平然と沖縄まで出向いたりしている。筆者から見れば矛盾にみちている。

拡大オスプレイの機内の配線などはむき出しだ=撮影・筆者

 開発時の事故と、導入後の事故は分けて考える必要がある。開発時に事故はつきものだ。これは旅客機でも自動車でも同じだ。また導入後の事故にしてもルーティンの輸送飛行と、最前線の実戦での作戦中の飛行や、特殊作戦を想定した暗視装置を使用しての夜間の低空飛行では意味合いが大きく異なる。単に事故の発生率だけで論じられるものではない。

 既にオスプレイは、アフガニスタンでの実戦に投入され、極限状態で使用されてきたが、さほどの事故は起きていないと筆者は承知している。また、実戦を通じての改良も行われてきた。

 前回紹介したようにファンボローなどの航空ショーでもフライトを行なっている。航空ショーで墜落事故が起きれば観客を巻き込む大惨事となる。主催者や英国当局がオスプレイが危険と判断したらデモ飛行は行われていなかったろう。

 さらには近く大統領専用機としても採用される可能性が高く、これらのことから常識的に考えればオスプレイを「欠陥機」と断罪するのは行き過ぎだろう。

 率直に申し上げて、米軍は自衛隊よりもはるかに人命に敏感だ。戦場での負傷者を救出するためには専用の救急ヘリも有しているし、負傷した兵士に極力短時間で高度な医療を施すことに費用を惜しまない。対して自衛隊では、専用の救急ヘリがないどころか、日本から援助を受けている途上国ですら有している装甲野戦救急車すら保有していない。

 本年度から支給が開始された隊員の個人救急セットは、国外で使用するPKO用には止血剤などが入っているが国内用には医師法の縛りもあって、これらの装備が入っていない。自衛官が国内で負傷した場合、血を流さないとでも思っているのだろうか。

 法律を変えるには金がかかるわけではなく、特に不都合があるわけでもない。それをしないのは戦争なんて起きっこない、戦争で隊員は死なないと高をくくっているからだ。

拡大オスプレイの機体下部には重量物を懸吊するためのカーゴフックが2箇所装備されている=撮影・筆者

 常に実戦を経験している米軍は、戦争すること自体を想定してない自衛隊と将兵の命に対する意識が異なるのだ。

 自衛隊が米軍と同じ戦闘を行えば、米軍が一人戦死者を出すところ、一個小隊分の戦死者を出しかねない。このような残念な現実を我が国のメディアは全く報道しない。

 ただオスプレイの場合、留意すべきなのはヘリのように離着陸でき、通常の固定翼機のように飛行できるという、ヘリとは異なる独特の特性だ。

 機体自体の信頼性・安全性と、この特殊な性格に起因する安全性の問題は分けて考える必要がある。例えるならば通常のヘリがマニュアル操作の自動車とするならば、オスプレイはオートマの自動車だ。

 オートマ車ではたまに操作を誤って、間違ってバックして立体駐車場から落ちるなどの事故が起こっているが、ヘリと異なる性質のオスプレイによる事故の可能性はどうなのか、その特性のために操縦上の人的ミスによって起こる事故の可能性はどの程度のものなのか。また何らかの問題があるならば、それは運用で解決できるのかを見極める必要がある。

 オスプレイのメカニズムはヘリよりも複雑であり、新しいカテゴリーの機体だ。画期的な高性能ということは開発のための技術的なハードルも高いということだ。

 このため開発にも難航し、何度も中止の憂き目にあってきたが、なんとか実用化にこぎつけたという経緯もある。安全性に問題があるのではと疑われても仕方ないことも事実だ。

 また事故の報告書などを改ざんするように言われたとの内部告発などもあり、米国の公式見解が必ずしも信じられない部分もある。

 ゆえに既存のヘリなどと機体の信頼性、飛行特性の違いを詳細に比較し、またそのための情報を米軍当局からだけではなく、GAO(Government Accountability office、米監査院)や民間のシンクタンク、その他の第三者機関から広く集めて検討すべきだ。

 そのように分析した上でオスプレイの安全性に問題があるとするならば、堂々と米国に対してオスプレイ配備の撤回や延期を要求すればよい。

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筆者

清谷信一

清谷信一(きよたに・しんいち) 軍事ジャーナリスト

軍事ジャーナリスト、作家。1962年生まれ。東海大学工学部卒業。03~08年まで英国の軍事誌Jane's Defence Weekly日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関、Kanwa Informtion Center上級顧問。日本ペンクラブ会員。著書に『専守防衛─日本を支配する幻想』『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『自衛隊、そして日本の非常識』『ル・オタク フランスおたく物語』、共著に『軍事を知らずして平和を語るな』『アメリカの落日―「戦争と正義」の正体』『すぐわかる国防学』など。最新刊に『国防の死角――わが国は「有事」を想定しているか』。

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