メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

シーア派はイスラム教ではない?

高橋和夫 放送大学教養学部教授(国際政治)

 2030年には、パキスタンが世界で一番イスラム教徒の数の多い国になる。世論調査で知られるアメリカのピュー研究所の予想である。この研究所のイスラム教徒の動向に関する近年の報告書が面白い。2011年1月に、世界のイスラム教徒の人口動態について、そして、12年8月9日にイスラム教徒の信仰の実践に関する報告書を公表した。どちらも興味深い事実を提示している。そのハイライトを紹介しよう。

 人口動態の報告書によれば、2010年のイスラム教徒の総人口を16億人と推定しており、これが2030年には22億にまで増大すると予想している。同報告書は、2030年の世界の総人口を83億とみているので、世界の4人に1人以上をイスラム教徒が占めるようになる。

 現在、世界で一番イスラム教徒の多い国はインドネシアであるが、現在の人口が1億8000万程度のパキスタンが、2030年には2億6000万に近づき、インドネシアを抜いて世界最大のイスラム国家となる。パキスタンは、同時にイスラム国家の中で唯一の核兵器保有国家でもある。

 今年8月に公表された世界のイスラム教徒の信仰の実践や認識に関する報告書からも、いくつかのポイントを紹介しておこう。これは、イスラム教徒が多数派を占める39か国で実に3万8000名を対象にした面談による大規模な調査に基づいている。

 イスラム教徒の97パーセントが、信仰告白(アッラーつまり唯一神以外に神はなく、ムハンマドは、その預言者である)をしており、93パーセントがラマダン月の断食を守っている。73パーセントが貧者への喜捨を実行しており、63パーセントが日に5回祈っている。しかし、余裕のある信者の義務とされるメッカ巡礼の経験者は9パーセントに過ぎない。こうした数字はイスラム教の求心力を示していよう。

 同時に興味深いのは、国別の習慣の違いである。

・・・ログインして読む
(残り:約594文字/本文:約1371文字)