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火星軟着陸を成功させたモヒカン刈りの「イラン」人

高橋和夫 放送大学教養学部教授(国際政治)

 8月6日にアメリカ航空宇宙局は、火星にキュリオシティ(好奇心)と名付けられた探査機を軟着陸させた。その瞬間の管制室の様子が中継された。歓声とともに立ち上がり、抱き合ったり、ハイタッチを交換したりする技術者たちの姿が感動を呼んだ。

 その中にいたイラン系の青年がアメリカで人気者になっている。その理由は、モホークと呼ばれる髪型である。日本ではモヒカン刈りと呼ばれているスタイルである。しかも星条旗の色である赤と青と白に髪の一部を染め、頭の横には星の形が刈り込んである。いかにも秀才型の技術者たちに1人だけラップ・ダンサーが混じっているという風情である。

 このモヒカン髪のお兄さんが、一夜あけるとソーシャル・メディアの人気者になっていた。本人のツィッターのフォロワーが、200以下から5万以上に爆発した。また結婚の申し込みが殺到しているという。

 このヘア・スタイルに、オバマ大統領も航空宇宙局への祝福のメッセージで「みなさん、近頃カッコよくなりましたね」と言及している。「自分もやってみようかな」との冗談まで言っている。

 この青年は、1979年生まれのボーバク・フェルドーシーというイラン系で、東京のアメリカン・スクールにも通った経験がある。マサチューセッツ工科大学で勉強したのち航空宇宙局に就職した。この火星探査機のプロジェクトで働いて9年目の32歳である。既に恋人がおり、探査機の着陸のために、働き過ぎで会う時間がなかったとぼやいている。

 イランがらみでは暗い話題が多いだけに、イラン系の青年が人気者になったのを喜んでいるイラン系アメリカ人は多いようだ。アメリカには少なくとも数十万のイラン系市民が生活している。

 案外知られていないのだが、イラン系市民は、アメリカで最も成功しているエスニック集団の一つである。その活躍は多くの分野にわたっている。スポーツならば

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