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 日本にやっと、本格的な「緑の党」が生まれた。欧州では1970年代からドイツを中心に「緑の党」が着実に支持を広げ、確固たる政治勢力となったが、日本ではそこまでの存在感を持てないまま今日に至った。

 東京電力福島第一原発の事故を受けて、世論は、反原発・脱原発へと転換している。その追い風をしっかりと掴まえることができれば、国会で議席を獲得し、日本の政治風土に革新をもたらす可能性もあろう。

 1960年代以降、日本は深刻な公害問題や化学物質による複合汚染、自然破壊を体験し、自然や環境の保護を求める市民や消費者の運動が各地で起きた。にもかかわらず、環境やエコロジー政策を掲げる政党は現れなかった。なぜ先進諸国で日本だけに環境政党が育たなかったのか。なんとも不思議なことである。

 理由として、以下のようなことが頭に浮かぶ。

 冷戦時代は中選挙区制度、90年代以降は小選挙区制度で、少数の有権者の声が反映しにくかった▽さまざまな市民・住民、被害者のあげた抗議の声が、司法制度や既存政党のルートを通じて、不十分ではあれ吸い上げられ、政策に反映した▽日本の政治風土で、環境や年金といったシングルイシューの政党への支持が集まりにくかった――など。

 ただ、なんといっても大きな背景は、原子力発電の是非をめぐる論争が日本では封じ込められ、大きな政治的争点になってこなかった、ということだろう。

■ドイツは80年代から躍進

 比較の対象として、世界各国の緑の党の中で最も強い政治的影響力を持つドイツの緑の党と比べてみよう。ドイツ各地での環境保護や原発反対運動を背景に1980年1月、同党の創設大会が開かれた。環境や反原発に加えて反核平和運動、女性の権利拡大、途上国との連帯、動物保護など幅広い主張を掲げる人々や運動体が合流した。3年後の1983年、連邦議会選挙で、同党は5・6%の票を得て、初めて28人の議員を下院に送り込んだ。さらに4年後の1987年の連邦議会選挙では、8・3%を得票して躍進、議員数は44人になった。

 この躍進の背景に、1986年に起きたチェルノブイリ原発事故があるのは言うまでもない。旧ソ連から西方に広がった放射能雲の影響で、ドイツ南部を中心に土壌や畜産物が汚染され、情報を十分に伝えなかった政府への批判が集まった。70年代以来、ドイツ各地に起きた原発や核廃棄物処理場の建設反対運動の声を、緑の党が吸い上げる形となった。

「3・11」の後の緑の党の躍進にも、福島第一原発の事故による反原発・脱原発の世論が大きく後押ししたことは明らかだ。保守派のメルケル政権は、福島の原発事故の後、2022年までに原発を廃棄する政策に戻ったが、それでも、州レベルの選挙では保守派が次々に支持を失い、緑の党の支持が上積みされた。

■民主主義を徹底した党運営

 日本の緑の党にも、いま同様の追い風が吹いており、2013年の参院選や各地の地方選挙などで議席を増やす可能性が生まれている。

 まず注目されるのは、その党運営において、国際的な緑の党と同じやり方を導入していることだろう。任期が来れば交代する共同代表制、少数意見を尊重し、とことん討議で合意を見出そうとする党内民主主義、立候補における男女平等など、欧州やオーストラリアなどと同じ党運営の原理を掲げている。「現代政治の最先端を歩む政党」という評価が出るゆえんでもある。

 地方での草の根のネットワークづくりも着実なものがある。共同代表に地方自治体の議員が顔を並べているほか、全国の各都道府県から選ばれた全国協議会委員には、各地の自然や環境保護、格差是正など社会運動に取り組んでいる人々が名を連ねている。国会議員はいなくても、ある程度の地力はついていることがうかがえる。

 ただ、爆発的な緑の党ブームが起きるかどうかはまったく未知数だ。

 この間の動きを取材した記者の口から「時代の最先端どころか、 ・・・続きを読む
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筆者

脇阪紀行

脇阪紀行(わきさか・のりゆき) 大阪大学未来共生プログラム特任教授(メディア論、EU、未来共生学)

1954年生まれ。79年に朝日新聞社に入社、松山支局などを経て大阪本社経済部に。90年からバンコクのアジア総局に駐在。米国ワシントンでの研修を経て97年からアジア担当論説委員。2001年からブリュッセル支局長。06年から論説委員(東南アジア、欧州など担当)。2013年8月末に退社、9月から、大阪大学未来共生イノベーター博士課程プログラム特任教授。著書に『大欧州の時代――ブリュッセルからの報告」(岩波新書)、『欧州のエネルギーシフト』(岩波新書)。

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