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低投票率で情勢急変も――不安な米大統領選

春名幹男

春名幹男 早稲田大学客員教授(米政治安保、インテリジェンス)

 国際情勢が経済でも安全保障でも曲がり角にさしかかる中で、2012年11月6日に行われる米大統領選挙。しかし、今回の米大統領選は、国民の間で盛り上がりを欠いている。

 4年ぶりのホワイトハウス奪還を目指す共和党は、フロリダ州タンパでの党大会で大統領候補にミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事(65)、副大統領候補にポール・ライアン下院予算委員長(42)を正式に決定した。

 他方、再選を目指す民主党のバラク・オバマ大統領(51)、ジョー・バイデン副大統領(69)の現職陣営は9月4~6日、ノースカロライナ州シャーロットでの党大会で陣容を固め、選挙戦が本格化する。

 オバマ、ロムニー両氏の支持率は各世論調査でほぼ横並び。両陣営とも選挙資金が豊富で、選挙戦の白熱化は予想できる。しかし、政策論争は期待できない上、両党内の対立がくすぶっており、4年前の選挙のような国民的な盛り上がりが見られない。

 その理由として、第一に、選挙登録運動が不活発なことが挙げられる。民主党中道派系シンクタンク「サードウエー」のこれまでの調査では、両党の支持が拮抗する「スイングステート」と呼ばれる激戦州8州で民主党支持の登録者数が80万人、共和党は8万人減少したというのだ。米国では選挙登録しなければ投票できないため、登録者数の減少は投票率の低下につながる。

 第二に、「変革」への期待が選挙戦を活性化した前回とは違い、両陣営とも大きな流れを形成できないでいることだ。

 オバマ大統領は米国の再生を掲げたが、現実には医療保険改革などで党派対立が激化して議会運営が行き詰まり、金融危機で巨額の公的資金を投入したものの景気回復は道半ば。失業率は8%台で高止まりしている。

 イラクから米軍を引き揚げたが、無人機や特殊部隊を多用したテロに対する「見えない戦争」はブッシュ前政権時より激化し、情報公開にも消極的で、本来の支持母体、リベラル派勢力内で失望感が出ている。

 他方、共和党は対テロ戦争を主導した「ネオコン」(新保守主義者)、2010年中間選挙で共和党大勝の原動力となった保守派運動ティーパーティー(茶会)などのグループが党内を揺るがし、宗教右派も絡んで党派対立のしこりが解消できていない。

 ロムニー氏は知事時代、人工中絶から医療保険改革、環境政策に至るまで穏健な政策で知られたが、大統領候補としては保守派へと急カーブを切った。政策アドバイザーや政権移行チームも各派の混成状態となっている。

 本人がモルモン教徒であることも重なり、「ミステリアスな人物」との不安をぬぐい去ることができていない。かつて、「ハゲタカ」と批判された投資ファンドを経営、十分な情報公開をしていないことも問題化した。好感度は高くなく、女性の支持拡大が大きな課題だ。

 とはいえ、米大統領選は

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