2012年09月07日
とりあえず主翼桁を替えるだけで6000飛行時間ほどの延命が可能だという。また主翼を交換すれば新造の機体とほぼ同じ程度の機体寿命が確保できる。P-3Cのメーカーであるロッキード・マーチン社、及びサードパーティ(P-3Cのメーカー以外の会社)がP-3Cの機体延命を提案している。
関係者によるとP-1の開発話が持ち上がったとき、海上幕僚監部はP-3Cの主翼桁の交換は不可能であり、主翼交換は新型哨戒機よりも高価になる、その理由は機体メーカーに莫大なライセンス料を払う必要があることも一因だ、だからP-1の開発がよりリーズナブルであり、必要だと結論づけたそうだ。
ところがその当時、米海軍ではP-8完成までのつなぎとして、P-3Cの主翼桁の交換などもおこない、寿命を延長した。在日米軍のP-3Cの機体に対する近代化は日本飛行機社がおこなっている。同社は海自のP-3Cの整備も担当しているが、同社が米海軍のP-3Cに施した延命措置が新造機よりも高価であるなどと言ったことは聞いたことがない。
米海軍機に対する近代化を日本企業が担当していたのと同じことが、なぜ海自のP-3Cにできないのか不思議に思うのは筆者だけではあるまい。
主翼の取り換えが新造機よりも高いというのは常識的に考えてありえない。カナダのIMPエアロスペース社はP-3Cの主翼の新造・交換をビジネスとしている。主翼や尾翼などを交換することによって1万5000時間の飛行時間を延長できる。カナダ軍はP3-CをCP-140オーロラとして採用しているが、同社の近代化パッケージをすべてのCP-140に施して、延命している。ノルウェー海軍のP-3Nもこの近代化によって延命されている。IMPエアロスペース社がロッキード・マーチン社に支払うライセンス料が莫大ならば、同社のビジネス自体は成立しないことになる。
またドイツ海軍は哨戒機アトランティックの後継として、オランダ海軍から中古のP-3Cを導入している。機体の寿命が尽きるならこれまたおかしな、かつ非現実的な選択ということになる。
サードパーティが機体の延命や近代化をおこなうことは珍しくない。例えばロッキード・マーチン社のベストセラー輸送機、C-130の近代化はボーイングやトルコのTAI社、イスラエルのIAI社、英国のBAEのシステムズ社、南アフリカのデネル・エビエーション社など多くの企業が手がけている。
またF-16のアップグレードビジネスにはBAEシステムズが参入し、すでに米空軍州兵の機体を近代化し、最近は韓国のF-16の近代化契約も獲得している。
仮に海自が新型哨戒機を採用するにしても、延命したP-3Cは航空自衛隊の輸送機にしたり、海上保安庁で使用すればいいだろう。新型機を導入するよりもはるかに調達コストも安くなる。またP-3Cの対潜システムなどを取り払って外国に売却することも可能だろう。
我が国は哨戒艇をフィリピンに供与したが、同様にP-3Cも洋上哨戒機として供与すればいいだろう。あるいは他の民主国家に販売することも可能だろう。武器禁輸の緩和の解釈しだいではそのまま海自のP-3Cを外国に販売することも可能なはずだ。用途廃止でスクラップにするよりはよほど納税者の利益になる。
海幕は新型機を開発したいがために、国内メーカーに高い見積もりを出させた可能性がある。そう疑う根拠もある。海幕関係者によると、海自が採用した掃海・輸送ヘリMCH-101は調達機数がわずか11機にもかかわらず、輸入よりも国内での組立生産が安上がりとして、川崎重工による国内生産を決定した。
だが、単に川崎重工が関わるだけでハンドリングチャージ(取り扱い手数料)が2割載せられる。その他、ラインの構築費、ライセンス料などの費用がかかるわけで、輸入よりも安くなるはずがない。子供が考えても分かりそうな話だ。
はじめに開発ありき、という結論で、それに沿った見積もりを関連企業に出させた可能性は否定できまい。
筆者はこの件に関して川崎重工広報部に問い合わせたが、
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