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【UH-X官製談合疑惑と日本のヘリメーカーの病巣(2)】 問われる調達計画

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 前回、我が国には3社のヘリメーカーがあり、ほとんど防衛省の需要に依存、互いに競争すらして来ず、このためコスト削減にも不熱心だったことを紹介した。だが、今後はそのような寄生体質の企業は生き残れないだろう。

 防衛費がGDPに比して右肩上がりに増加した時代は終わり、現状はほぼ横ばいだ。ところが、装備調達費は、人件費、装備の保守費などの増加によって、右肩下がりだ。すでに調達予算と維持・修理予算の総額は逆転している(我が国の防衛と予算(案)-平成24年度予算の概要-)。

 しかもヘリコプターを含めて装備類は高度化しており、調達単価も高騰している。例えば仮に同じ規模の予算があっても、かつて100機買えたヘリが、50機しか買えないということになる。

掃海・輸送ヘリコプター「MCH―101」=岐阜県各務原市の川崎重工岐阜工場

 防衛省のヘリはほとんどがライセンス生産だ。だが調達数が減ると、コンポーネントの国産化比率が減る。例えば生産数が1000個ならば採算に合うパーツでも、100個では採算に合わないからだ。

 生産機数が減れば、国内生産で採算に合うパーツの比率は減っていく。例えばかつて機体の8割が国産化できても調達数が激減すれば国産化率は大幅に減る。となればこれはライセンス生産ではなく、単なるノックダウン生産となってしまう。

 実際に海上自衛隊の掃海・輸送ヘリ、MCH-101や陸上自衛隊の戦闘ヘリ、AH-64Dではほとんどのコンポーネントを輸入してノックダウン生産しているに過ぎない。これでは技術移転を通じて、技術を向上させるというライセンス生産のメリットは享受できない。

陸上自衛隊の戦闘ヘリ、AH-64D。通称「アパッチ・ロングボウ」

 防衛省や自衛隊は国内での稼働率を上げるため、有事の増産のためには是が非でも「ライセンス生産」が必要だというが、先述のように実際は単なる組み立てである。にもかかわらず調達単価は2~3倍になっている。しかもMCH-101は稼働率30パーセント台と極めて低いという。対して輸入された警視庁のAW101(MCH-101の原型機)の稼働率はさほど低くないとされている。

 つまり、「ライセンス生産」よりも輸入品の稼働率の方が高いことになる。ならば「ライセンス生産」をする意義はまったくない、むしろ有害だ、ということになる。

 そもそもMCH-101の調達に関しては

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