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慰安婦問題「土下座」パフォーマンスと、いかにも韓国的な「希代の宗教ビジネスマン」=文鮮明氏の死

小北清人 朝日新聞湘南支局長

 このところ、韓国各地で、何とも奇妙奇天烈な「土下座パフォーマンス」が繰り広げられています。

 「慰安婦問題について、心よりお詫びいたします」

 とハングルで書かれた横断幕。それを掲げるチマ・チョゴリや和服姿の女性たちの集団。タスキをかけた女性が「謝罪文」を読み上げたあと、全員で一斉に、「心から謝罪します」と声をあげ、まるで「土下座」するかのように、頭を90度下げて見せるのです。

 この「謝罪パフォーマンス」、やっているのは、韓国人と結婚し、韓国各地に住む日本人女性たちで作る「韓日の歴史を克服し、友好を推進する会」なる団体。この5月に結成され、6月末から各地でこの手の謝罪集会を行ってきました。

 8月10日に李明博(イ・ミョンバク)大統領が、韓国が実効支配する日本領・竹島に電撃的に上陸、日韓関係が急速に悪化するなか、8月14日にはソウルなど全国10数カ所で会の女性計1200人が街に繰り出し、頭を下げまくりました。韓国や日本の歌を歌ったりもしたそうです。

 「あくまで自発的に作られた会」と団体のリーダーは強調し、韓国メディアも、「謝罪しない日本政府に代わって謝罪を続ける健気な女性たち」といった調子で、至極好意的に報じています。

 ですが、韓国メディアが伝えない事実があります。実はこの会、あの統一教会(日本での正式名称は世界基督教統一神霊協会)系の団体なのです。

 会のリーダーE氏は、日本の統一教会では知らない人間がいない有名な女性です。教団の内情をよく知る関係者は、こう言っています。

 「いま60代半ばの彼女は教団初期からのメンバーで、日本支部の大幹部でもあった。韓国人の夫とともに韓国に移り住んで4年ほどになる。日本では教団を代表する『三人娘』の一人といわれ、若いころ、東京にある朝鮮総連系の朝鮮大学前に立ち、『勝共講義』(共産主義撲滅を叫んだ当時の統一教会の政治活動教義)を行った逸話で有名だ」

 統一教会なら、集団でこの種の「謝罪パフォーマンス」を繰り広げるのもうなずける話です。というのも、彼らの教義の中核にあるのが、

 「日本人は、植民地時代の罪を、韓国人にあがない続けなければならない」

 というものだからです。セミナーで日本人信者は繰り返し、この「日本人による永遠の贖罪義務」(これを「蕩減」と呼びます)を叩き込まれるといいます。いかにも韓国らしい、韓国でしか生まれなかったであろう異端の宗派、それが統一教会といえるでしょう。

 女性信者は、へき地だろうと山奥だろうと、教団が「マッチング」した初対面の韓国人男性のもとに嫁ぐのです(その結婚が幸せなものとは限りません。この8月には信者の日本人妻が韓国人の夫を殺す事件が起きました。夫の家庭内暴力が原因だったといいます)。

 「すべてをなげうち、献金しないと不幸になる」などと、つぼや印鑑を高額で買わせる「霊感商法」は、もっぱら日本で行われました。多くの被害者が出たことに、教団は「関与していない。一部信者が熱心すぎた」などと説明してきましたが、事情を知る関係者の話はこうです。

 「つぼや印鑑を大金を出して買えといっても、韓国ではそんなもの、誰も買わない。だが経済規模がずっと大きい日本での、『たたり』の効果は絶大だった。日本がキリスト教の影響が小さく、迷信に騙される人が少なくなかったのも、原因の一つだろう。つぼを売りつけるのを考え出したのは日本人の教団幹部だが、最盛期の1970~80年代は、儲かって儲かってしょうがなかった。教団にとってこれほど利益率の高いビジネスはなかった」

 霊感商法で多くの日本人から大金を巻き上げ、それを原資に韓国や米国などで多くのビジネスに進出、巨大企業グループを築いたのが統一教会といえます。

 グループを一代で興したのが、9月3日未明、肺炎などの合併症で死亡した教祖・文鮮明(ムン・ソンミョン)氏です。92歳でした。いまの北朝鮮・平安北道(ピョンアンプット)定州(チョンジュ)で生まれた文氏は朝鮮戦争(1950~53)のさなかに韓国に逃げ、54年にソウルで教団を創設、59年には日本や米国に支部を開くなど、活動を広げました。

 「私は人類のメシアである」

 「イエスと会ってメシアとしての自覚が生まれた」

 「名前が出るだけで世界が大騒ぎになる問題人物、それが私だ」

 と自称した文鮮明氏。真面目でウブな信者ほど彼を「真のお父様」と崇めました。

 とはいえ、霊感商法が大きな社会問題となってから、主な資金源だった日本ではかつての勢いを失っていきます。教団の新たな広告塔として、中森明菜や故ホイットニー・ヒューストンを

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