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二大政党の変化と第3極の行方――右派連合による右旋回か?

小林正弥

小林正弥 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

 二大政党の党首選は、いずれも党首を支える立場の政治家が立候補の可能性を示唆してその結果に大きな影響を与えた。

 民主党では細野豪志氏が一時意欲を示して野田総理を脅かす雰囲気であった。他方で、自民党では石原伸晃氏が実際に立候補して谷垣禎一総裁が立候補を断念した。振り返って考えると、谷垣氏は東日本大震災後に「日本の絆」を強調するなどの点で民主党とも共通性のある姿勢を示し、国際関係についても特に右寄りの姿勢を示してはいなかった。だから、左右軸で見れば、中道右派的な姿勢であったと言えよう。

 これに対して、鳩山政権時代には中道左派的だった民主党は、野田政権になってから中道右派的な姿勢に変化したと考えられる。だからこそ、二大政党の間で政策の差が小さくなり、消費税については3党合意が成立した。

 ただ、野田政権が大連立を追求しようとしたのに対し、谷垣総裁はそれを斥け、あくまでも早期の総選挙により、政権交代を目指した。石原氏の立候補により自分の手でそれを実現することはできなかったが、筆者としては大連立を斥けた点で政党政治としての筋を通したことは高く評価したい。野党時代の党首として、かつての河野洋平総裁を思わせるものがあるが、いずれも政権を自分で奪取することはできなかったものの、保守政党における良質の党首だったと言えるのではないだろうか。

 これに対し、次の自民党総裁が石破茂・安倍晋三・石原伸晃氏のいずれかになった場合、自民党の政策は基本的に谷垣総裁時代よりも右寄りになり、中道右派的な位置から右派的な位置に移動するのではないだろうか。

 石原氏は幹事長でもあったので他の候補よりも谷垣時代との連続性を重視するかもしれないが、石原慎太郎都知事と親子関係にあることを考えると、領土問題に関しては少なくとも中国などからは右寄りとみなされそうである。もちろん、石原都知事は典型的な右派的政治家であり、場合によって極右とみなされかねない言辞さえしばしば弄している。

 このような自民党の政策の移行は、ある意味では民主党の変化に対応している。鳩山政権から菅政権・野田政権と移るにつれて、当初の民主党らしさはなくなり、中道、さらには中道右派へと変化した。これに対応して、谷垣時代には中道ないし中道右派的だった自民党がさらに右派的に移行しつつあるわけである。つまり、二大政党が全体として、鳩山政権成立時より右寄りにそれぞれ変化しつつあることになろう。

 ある意味では、政党政治の機能という点からすれば、自民党の政策がこのように変化し、再び民主党との差が明確になることは健全なことかもしれない。人びとが総選挙で自分自身の意思を、大政党を通じて表示することが可能になるからである。ただ、政治的ナショナリズムのような右の「民意」は自民党を通じて明確に表現できるようになる半面、脱原発のような左寄りの「民意」はどうだろうか? 

 野田政権は良質の「民意」は受けて、辛うじて2030年代の原発ゼロという方針へと修正したものの、今回の代表戦で民主党内部では政策転換は困難であることが示されたから、この「民意」は民主党支持へとは簡単に向かわないように思われる。

 だから、民主党の党勢回復は容易ではないだろう。そして、良質な「民意」が国政で希望を託すべき政党を必ずしも持たないとすれば、それは政党政治にとって憂うべきことである。他方で、自民党の次期総裁にもさほど清新さは感じられず、下野した際の自民党の問題点を根本的に刷新できるとも思えないから、そこに新しい希望はあまり感じられず、自民党が急速に党勢を回復するとも思えない。

 そうすると、二大政党以外の政党、いわゆる第3極に人びとの目は向かわざるを得なくなるだろう。いま最大の話題になっているのは日本維新の会であり、「国民の生活が第一」(小沢新党)との「第3極」の連携の可能性も注目されたが、どうやらその可能性は少なそうである。

 日本維新の会は様々な政策を掲げているので単純な左右軸に位置づけることが難しいが、安倍氏を党首に迎えようとして働きかけたことを考えると、次第に右寄りの姿勢が鮮明になってきたように思われる。総選挙で躍進して、自民党と連合して過半数を得ることが可能になれば、自民党・公明党と日本維新の会との連合政権が成立することも充分に考えられよう。

 これは、日本政治の右寄りの旋回を意味するだろう。いわば、右派連合政権と言えるのではないだろうか。大阪維新の会は脱原発を主張してきたから、この点は連合政権の成立時に際して問題となりうるだろう。

 ただ、日本維新の会が脱原発の姿勢を後退させれば、この連合政権は領土問題に対しては現政権よりもさらに強硬姿勢を打ち出し、武力紛争になる危険性も考えられないではないし、集団的自衛権を認める可能性も高く、いずれは9条改憲を目指すことも考えられよう。民主党政権の成立により一度、中道左派の方向に旋回した日本政治は、その反動として一気に、右派政権へと右旋回する可能性があるように思われる。

 他方で、こと脱原発に関しては、 ・・・ログインして読む
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筆者

小林正弥

小林正弥(こばやし・まさや) 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

1963年生まれ。東京大学法学部卒業。2006年より千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。千葉大学公共研究センター共同代表(公共哲学センター長、地球環境福祉研究センター長)。専門は、政治哲学、公共哲学、比較政治。マイケル・サンデル教授と交流が深く、「ハーバード白熱教室」では解説も務める。著書に『対話型講義 原発と正義』(光文社新書)、『日本版白熱教室 サンデルにならって正義を考えよう(文春新書)、『サンデル教授の対話術』(サンデル氏と共著、NHK出版)、『サンデルの政治哲学 〈正義〉とは何か』(平凡社新書)、『友愛革命は可能か――公共哲学から考える』(平凡社新書)、『人生も仕事も変える「対話力」――日本人に闘うディベートはいらない』(講談社+α新書)、『神社と政治』(角川新書)など多数。共訳書に『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業』(ハヤカワ文庫)など。

 

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