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春までの長期戦が必至の尖閣問題

藤原秀人 フリージャーナリスト

 野田政権が尖閣国有化を閣議決定した翌9月11日から、中国各地で激しい反日デモが繰り広げられた。野田佳彦首相は19日のテレビ朝日系の番組で「国有化するということによっての一定の摩擦は起こるだろうとは考えられたが、想定は超えている」と語った。一国のリーダーとして見通しの甘さを恥じるわけではなく、傍観者の発言のようだったのが嘆かわしい。

 その反日デモは、満州事変の契機となった柳条湖事件から81年となった18日を最後に下火になった。反日のガスはとりあえず抜けたのだろう。また、これ以上の乱行は国際社会だけでなく、まっとうな中国国民からも反発を招くだけだと、中国当局も抑えに転じたと見られる。

 しかし、中国当局の対日姿勢が軟化することは当面あるまい。ネクストリーダーになるのが確実な習近平・国家副主席は19日、北京を訪れたパネッタ米国防長官と会談した。

 「日本側はがけっぷちで踏みとどまり、中国の主権と領土保全を侵害するあらゆる誤った言動を停止すべきだ。米国側が地域の平和と安定という大局に立って、慎重な言動を貫き、釣魚島(尖閣諸島)の主権をめぐる争いに介入することを止め、矛盾を激化させ、状況をより複雑にする言動を回避することを望んでいる」

 習氏は日本側を強くけんせいするだけでなく、第三国の米国に尖閣問題を持ち出し、手を出すなと警告した。尖閣は国有化される前も日本が実効支配していた。日本からすれば現状に変化はないといえるだろうが、釣魚島は中国の領土だと主張していた中国当局には日本による「国有化」は、メンツを粉々に壊されたことになる。中国当局の怒りの原因である。

 間もなく開かれる共産党大会で習氏は党トップの総書記になる見込みだ。だが、他の政治局常務委員をはじめとする幹部人事は完全には固まっていない。だから、大会の日程も発表されていない。習氏や胡錦濤氏(総書記)だけでなく、江沢民・前国家主席ら長老らも加わった人事をめぐる闘いは継続中なのだ。

 そんな敏感な時に、侵略の記憶がまだ生々しい中国の指導者が、神聖な領土問題で譲歩することはまずあり得まい。日本に理解のある胡氏も同じである。だから、中国当局が「ここは中国だ」と、尖閣周辺に海洋監視船などの「公船」を送り込むことはなくならないだろう。少なくとも、人事が一段落する来春の全国人民代表大会までは。

拡大尖閣諸島・魚釣島の接続水域で、中国の海洋監視船(奥の2隻)を警戒する海上保安庁の巡視船=2012年9月19日

 それに、監視船や軍艦など中国の公船が日本の領海に侵入しても、海上保安庁は

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筆者

藤原秀人

藤原秀人(ふじわら・ひでひと) フリージャーナリスト

1980年、朝日新聞社入社。外報部員、香港特派員、北京特派員、論説委員などを経て、2004年から2008年まで中国総局長。その後、中国・アジア担当の編集委員、新潟総局長などを経て、2019年8月退社。2000年から1年間、ハーバード大学国際問題研究所客員研究員。

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