2012年10月20日
なぜ、そうなのか。
EUの拠点のあるベルギーのブリュッセルには、2万人といわれるEU官僚が働き、最低3カ月に一度は、加盟27カ国の首脳が集まり、重要問題を協議する。域内の総人口は5億人。2011年、ブリュッセルを訪れる機会があったが、欧州議会や欧州委員会には市民の見学客が絶えず、「欧州の首都」という雰囲気を感じさせた。
ところがこのEUはいま、ユーロの動揺と経済危機との格闘の真っ最中だ。ギリシャやスペインなど南欧諸国の救済が失敗すれば、ユーロ圏はおろか、欧州全体の経済の信用が落ちかねない瀬戸際だ。
ノーベル平和賞が、経済危機の最中のEUに贈られた。苦闘の中にあるEUの背中を押して応援したいという思いが伝わるが、現実には、南欧諸国の街頭では緊縮財政へのデモや警官隊との衝突、流血が相次いでいる。
そんな光景を見た後に、「戦争の大陸を平和の大陸に変えたユニークなプロジェクト」という平和賞の授賞理由を耳にすると、どこかブラックユーモアを聞かされた気分になっても仕方ない。
大英帝国の「栄光」の記憶が捨てきれず、欧州統合を体質的に嫌う英国のメディアは、ここぞとばかりに、辛辣だ。
「EUはジョークになった」「馬鹿げている」。タブロイド紙はこう書きたて、保守系のデイリー・テレグラフ紙は社説で「アルフレッド・ノーベルの子孫たちはお金の返還を求めても遅すぎはしない」と書いた。
ノーベル平和賞の委員会が、アルフレッド・ノーベルの母国スウェーデンではなくノルウェーに設けられたのは、スウェーデンとノルウェー両国の和平と安定を願ったノーベルの遺志によるものだ。
ところで、このノルウェーとEUとの関係はかなりねじれている。
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