メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

「第2の三木」を追い込むには徹底審議しかない

後藤謙次 後藤謙次(フリーの政治コラムニスト、共同通信客員論説委員)

 「輿石幹事長の方がはるかに善人に見えてきた」――。10月19日に行われた民自公3党党首会談後、自民党最高幹部の一人はこう漏らした。野田佳彦首相のことである。

 ここ1年の自民、公明両党は民主党の輿石東幹事長の硬軟織り交ぜた老獪な野党対策に翻弄されてきたこともあったのだろう。すべては輿石幹事長が描いたシナリオに従って野田首相が動いていると思い込んでいた。ところが、今回の党首会談は野田首相の方が輿石氏よりひどいと言うのだ。この幹部は「悪役交代」とまで言い切った。

 党首会談に先立って開かれた3党幹事長会談で輿石氏は自民党の石破茂、公明党の井上義久両幹事長にこう伝えた。

 「党首会談では首相から新しい提案があるはずだ」

 新しい提案の中身は言うまでもなく衆院解散の時期のこと。自公両党は具体的な日付の明示はなくとも一定の時期についての言及はあると見ていた。

 首相は自民党の前総裁・谷垣禎一氏に消費増税法成立の条件に「近いうちに国民に信を問う」との約束を口にしたからだ。しかし、その後は「しかるべき時期」「そう遠くない将来」など、ころころと発言を変えてきた。自公の執行部はもはやこれ以上の引き伸ばしはないだろうと思いきや党首会談で首相が発した言葉は「だらだらと政権の延命を図るつもりはない」。そして「私を信じて欲しい」だった。

 安倍氏は怒り、公明党の山口那津男代表は「国民をバカにしている」と声を震わせた。党首会談は決裂したが、民主党はさっさと10月29日の臨時国会召集の方針を決めた。結果として自公は何の成果も得られないだけでなく、首相に「見切り発車召集」の口実を与えることになった。

 首相の背信行為を責めるのは簡単だが、

・・・ログインして読む
(残り:約785文字/本文:約1494文字)