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「未来への責任」を競い合え――総選挙で問われるもの

恵村順一郎

 2005年の「小泉郵政選挙」、09年の「政権選択選挙」。

 私たちは、続けて2度、「熱狂」の総選挙を経験した。その結果、政治は有権者の熱い1票に応えることができたか。

 とてもそうとは言えまい。1年限りの首相交代を5回も繰り返している政治の惨状をみれば明らかだ。

 もはや言い古されたセリフではある。だが、今度の総選挙こそ、地に足のついた政策論争にしなければならない。

 日本の現状は、極めて厳しい。

 1000兆円にも及ぶ国の借金。世界でもっとも進む少子高齢化。出口が見えない長期のデフレ、不景気。産業は空洞化し、地方の経済は疲弊している。会社員や公務員の給与は目減りし、正社員になれない若者の層が広がる……。

 そんななかで、経済のグローバル化が進み、財政支出の余地は限られる。どの政党が政権を担ったとしても、現実にとりうる政策の選択肢はあまりにも狭い。政治にとって、まさに苦難の時代である。

 だからこそ、重要なのは政策の方向性だ。限りある資源と時間を、そこに集中的に振り向ける必要がある。

 政治がいま、めざすべき政策の方向性とは何か。

 それは、「未来への責任」に尽きるのではないか。

 子や孫の世代にいまの世代のツケを少しでも回さない。

 その意味で、民主、自民、公明3党が合意した、消費増税を柱とする社会保障と税の一体改革は野田政権の大きな成果だった。

 だが、消費税を10%に上げただけでは、毎年1兆円ずつふくらみ続ける社会保障費の伸びをまかなうことはできない。持続可能な社会保障を築くためには、さらなる負担増と、給付の抑制が欠かせない。

 思考停止に陥らず、社会保障制度改革国民会議などの場を通じて、長期的な視野にたった議論をすみやかに始めなければならない。

 石原慎太郎氏と橋下徹・大阪市長が率いる日本維新の会は、消費税の地方税化を掲げる。首長の立場からの意義ある問題提起と受け止めたい。

 一方で、社会保障の財源になっている消費税をすべて地方税化して、社会保障を持続可能にできるのか。財政全体をにらんだ整合性をどう図るのか。論戦を通じて、分かりやすく説明してほしい。

 原発・エネルギー政策では、二大政党の対立軸が鮮明だ。

 民主党は「2030年代の原発ゼロ」を掲げる。閣議決定を見送るなど腰が座っていなかったが、マニフェストには盛り込むという。今度こそ「マニフェストが守れなかった」では済まされない。

 原発に代わる再生エネルギーをどう育てるのか。燃料費の増加など当面のコスト増をだれがどう分担するのか。発送電の分離など電力システム改革にどう取り組むか。中長期的な論点について、説得力ある工程表を示してほしい。

 一方、自民党の安倍晋三総裁は「原発ゼロは無責任だ」と民主党の方針を批判する。「原発の停止で年間3兆円の富が海外に出ていく。こうした状況が続けば日本は経常収支が赤字になる」。財界など同じような立場の批判は多い。

 自民党の原発政策は物足りない。「10年内に新たなエネルギーの供給構造を構築する」と結論先送りなのだ。あれだけ過酷な原発事故を経験したというのに、何とものんびりした話ではないか。

 ただ、自民党も将来、原発を減らしていく可能性については否定していない。ならば、

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