菅沼栄一郎(すがぬま・えいいちろう) 朝日新聞記者(地域報道部)
朝日新聞記者 1955年11月27日生まれ。80年、新聞記者に。福島支局、北海道報道部、東北取材センターなど地域を歩く。この間、政治部で自民党などを担当。著書に『村が消えた――平成大合併とは何だったのか』(祥伝社新書)、『地域主権の近未来図』(朝日新書、増田寛也・前岩手県知事と共著)。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
画面に流れる「88888888(パチパチパチ)」が「拍手」だったとは、初めて知った。原発の議論で言えば、福島みずほ社民党党首が、野田佳彦首相に対し「2030年代の原発ゼロを言いながら、建設中の大間原発の建設(継続)を認めたのはなぜか。まったく矛盾している」と斬りつけた返す刀で、安倍晋三・自民党総裁に対し「しばらく結論出さない、っていうのは、原発推進ですよ」と浴びせかけた。
これが野田vs安倍2人の対論だったら「続原発か脱原発か」(野田首相)程度の議論で終わっていただろう。10党を超える乱立選挙は悪いことばかりではない。マニフェストの権威が民主党によって失墜し、自民党政権の伝統だった「あいまい公約」に戻った今回の選挙は、あいまいの裏側にある「隠れた争点」を突く野党、小党(もちろんメディア)の突っ込みが、期待される。
原発をめぐる今後の議論のなかで、(1)放射性廃棄物の問題をどう解決するか(2)東京電力の処理をどう進め、賠償や除染、廃炉といった費用負担に国がどう関わるか(3)発電と送電の分離をはじめとする電力システム改革をどうするか(11月19日付、朝日新聞社説)などをめぐる論点が、今後の焦点となりそうだ。
初の党首討論では、「将来的な原発ゼロ」を明言していないのは自民党だけ、という事実を確認できた。これまで演説ではほとんど原発に触れることがなかった安倍氏は「自民党も安全神話の中にあったのは深刻に反省している。しかし原子力政策を推進してきた結果、廉価で安定した電力を作り、高度経済成長を遂げ、その果実の上に立って現在の社会保障の基盤を築いてきたことも事実」と原発の功績を指摘した。11月30日の日本記者クラブの党首討論会では「できるだけ原発に依存しない社会を作っていこうと思うが、今からゼロにするとは軽々に言うべきではない」とした。
安倍氏にはもっと語ってもらいたい。このまま原発を維持するとしたら、廃棄物処理をどうするのか。核燃料サイクル事業をさらに継続するのか。除染や廃炉コストを考えれば「原子力発電のコスト」はこの先、火力や自然エネルギーを上回ることにならないか。
上記の疑問は、野田首相への疑問にも重なる。9月にまとめた「革新的エネルギー・環境戦略」のなかで、「2030年代原発ゼロ」を言いながら、核燃料サイクル事業の将来は明言せず、建設中の大間原発などの工事を中止しなかった。
「脱原発(依存)」を唱える野党側も、「即時ゼロ」「10年後」「10年代には」「30年代に」と、スピード感を競うかのようだが、それまでの道のり(工程表)が明示されていなかった。こうしたなかで、日本未来の党が12月2日に発表した「卒原発カリキュラム」骨子は、
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