2012年12月11日
結論を先に言えば、妥当性は全くない。さらにはXC-2が現在の空自にとどまらず、自衛隊に必要不可欠な輸送機ですらもないということを補強する事実を紹介しよう。
XC-2は実は、軍用戦術輸送機としては異例の機体だ。通常の軍用戦術輸送機は非舗装の滑走路での運用を前提に設計されている。だが、空自は川崎重工に対してXC-2の非舗装の滑走路での運用要求を求めていない。
軍用輸送機は常に滑走路が舗装された空軍基地や民間空港で運用できるとは限らない。急造された臨時の滑走路や、はじめから舗装されていない僻地の滑走路、あるいは舗装滑走路でも敵の空襲などを受けて破損した滑走路などでも運用することを前提にしている。
先の東日本大震災で米空軍は、被災直後の空自松島基地や仙台空港にC-130などを着陸させ、空港の機能復旧を手伝った。被災直後の2011年3月16日、3000メートル滑走路のうち、がれきや海水などを除去した約1500メートルの滑走路にC-130輸送機が着陸。空港復旧のための機材と人員を搬入した。
だが不整地での運用を想定していないXC-2にはこのような運用はできないだろう。またXC-2の運用には2000メートルという比較的長い滑走路が必要である。
筆者がこの連載の第1回で海上自衛隊が第三次補正予算で調達したC-130Rの調達に対して一定の理解を示したのには、このような背景がある。
大震災を想定するならば、非舗装の短い滑走路で運用できる機体が必要であり、しかもそれが中古であれば入手までの期間が短いからだ。どうしても空自が災害派遣で有用な機体を補正予算で買いたいならば、空自も保有しているC-130Hの中古を買い増すとか、さらに小型で、短い滑走路で運用が可能なC―27Jなどの輸送機を中古あるいはリースで調達すべきだった。これまた米軍では余剰となっているからだ。
川崎重工はXC-2は不整地でも運用可能だと主張している。だがその場合、極端に貨物の搭載量を減らす必要がある。だがそもそも空自は、先に指摘したように、XC-2に不整地での運用を要求していない。筆者の知る限り、XC-2の飛行試験では不整地での運用検証試験はおこなっていない。試験すらしていない機体で、またそのような訓練もしたことがない搭乗員がぶっつけ本番で不整地で離着陸をすれば事故を起こす可能性は極めて高い。つまり机上の空論でしかない。
多くの空自関係者によると空自がXC-2に不整地運用を要求しなかったのは、戦闘機のエンジンや、対空ミサイルであるパトリオットのシステムなどを空自の基地や民間空港間で輸送することを主眼とし、戦時に陸自の重装備などを運ぶことに重きをおいてこなかったからだという。恐らくその通りなのだろう。
不整地での運用を前提とした場合、着陸脚や機体構造も頑丈に造る必要がある。そのぶん機体は重たくなるし、開発や調達コストも高くなる。速度も遅くなるだろう。だが不整地運用を考えなれば開発や調達コストが安くあがる。速度も速くなる。つまり、XC-2は「平時の輸送機」なのだ。
またXC-2の低空での運動性能にも疑問がある。
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