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日中の「破氷」は再現されるか

藤原秀人 朝日新聞記者(国際報道部)

 「聴其言而観其行」。論語の一節で、人を判断するには、その人の言葉を聞くだけでなく、行動もよく見なければならない、という意味だ。

 安倍晋三氏が2006年秋に首相に就任する前、中国のメディアは安倍氏を「右翼」「親台派」と評する一方で、「聴其言而観其行」という表現をしばしば用いていた。小泉純一郎氏の度重なる靖国神社参拝で凍り付いた日中関係を立て直すのでは、という期待が込められていた。

 安倍氏は首相就任後、初の外遊先に中国を選び、胡錦濤国家主席や温家宝首相らと会談、「戦略的互恵関係」の構築を目指すことで合意した。中国側は安倍氏の訪中を「破氷の旅」と高く評価した。安倍氏が靖国参拝を封印したこともあって、2009年の政権交代までは日中関係は安定を続けた。

 その安倍氏だが、2012年の自民党総裁選にあたり、自衛隊の国防軍化など「右」の色を再び強く打ち出した。このため、中国では再び安倍氏への警戒心が膨らんだ。

 第二次安倍政権発足直前の12月23日、中国国営通信新華社は2013年のアジア太平洋地域情勢について同社の倶孟軍アジア太平洋総分社長へのインタビューを伝えた。その中で倶氏は日本について次のように述べた。

 日本の政治的風向きの右旋回が加速する可能性がある。首相に選出されるとみられる安倍自民党総裁は係争のある島々を「日本の所有」とし、「交渉の余地なし」と述べている。また前回の首相在任中に靖国神社を参拝できなかったことを「非常に遺憾」と表明しただけでなく、平和憲法を改正し、自衛隊を「国防軍」に昇格させ、「集団的自衛権」の行使を認めるようにすることを考えている。

 そのうえで、倶氏は次のように指摘した。安倍氏がこれらの発言を実行に移せば、日本の右旋回で東アジアは「緊張・対決の時代」に入る。

 日本ではこういう発言を「威迫」と受け止める人が少なくない。新政権への内政干渉ともいえるだろうが、関心の強さの表れでもある。再び「聴其言而観其行」である。

 実際に安倍氏がどういう対中外交をするかは定かでないが、国防軍や靖国参拝についての発言は慎重になっている。また、官邸の外交機能強化を図るため谷内正太郎元外務事務次官を内閣官房参与に起用することも中国側は評価しているようだ。

 谷内氏は2005年から3年間、次官を務めた。この時期に中国のカウンターパートだった戴秉国氏と対話を重ね、戴氏の故郷にも招待されるという関係を築いた。「戦略的互恵関係」のアイデアも、この2人が編み出したといわれている。その戴氏は現在、外交担当の国務委員(副首相級)である。

 自民党副総裁の高村正彦氏は民主党政権時も日中友好議連会長を務めていた「もの言う親中派」である。入閣した林芳正氏は同議連の事務局長。父の義郎氏も同議連の会長を務めたことがある。

 このようにチーム安倍の陣立てを見ると、中国の要路とのパイプは確かに存在する。関係改善のためにどう使うかが問われるが、前政権時とは状況が異なる。 ・・・ログインして読む
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筆者

藤原秀人

藤原秀人(ふじわら・ひでひと) 朝日新聞記者(国際報道部)

1980年、朝日新聞社入社。外報部員、香港特派員、北京特派員、論説委員などを経て、2004年から2008年まで中国総局長。その後、中国・アジア担当の編集委員、新潟総局長を経て、2014年9月より国際報道部。2000年から1年間、ハーバード大学国際問題研究所客員研究員。

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