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アベノミクスと「ダモクレスの剣」――「経済再生」という夢想の後に待ち受けるもの

小林正弥 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

■国家体制変革の時

 他方で、この最終的目標を達成するために、安倍政権は参議院選挙までは右派的政策については衆議院の再可決のような強引な力の行使は可能な限り慎むだろう。原発の再稼働のような、多くの人びとが反発しそうな政策はなるべく遅らせて、穏やかな政策に力点を置くかもしれない。

 そうすれば、現在の勢いを持続させて参議院選挙でも勝利することは不可能ではないかもしれない。参議院の3分の2を確保することができれば、いよいよ改憲が可能になる。自民党だけではこれはなかなか難しいだろうから、他党と協力して3分の2を確保することを考えるだろう。

 公明党と合わせて3分の2議席に達するならば、公明党が改憲に賛成する場合は、現在の自公体制のもとで改憲を行うことができる。ただ、公明党は平和主義的な要素を残しており改憲に反対するかもしれないから、抵抗を続ける場合には安倍総裁はその他の政党と組むことを考えるだろう。すでに、石原「日本維新の会」代表は、総選挙前に、改憲のために自民党が公明党と別れれば自民党と連合する可能性を示唆したのである。

 「日本維新の会」は自主憲法の制定を目指しているから、これはむしろ当然であり、この2つの党をあわせると衆議院では348議席となって既に3分の2を凌駕している。参議院選挙までにもちろん安倍自民党は幾つかの点では批判を浴びるような政策や行為をするだろう。だから、今回の衆議院選挙ほどは大勝できないかもしれない。それでも、参議院選挙まではそれほどの期間はないから、議席の増加は可能かもしれず、改憲政党で3分の2を確保することはできるかもしれないのである。

 そうなったらどのようなことが起こりうるだろうか? 次の総選挙をぎりぎりまで引き延ばせば、参議院選挙後に3年半弱もあるから、その間に相当のことができる。少なくとも次の参議院選挙までの3年間は国政選挙をせずに、衆議院の圧倒的多数の力で思う存分右派的政治ができるのである。

 まず、安倍総裁が言明している通り、憲法96条の改定を発議する。これには、必ずしも右派政党ではなくとも、みんなの党のような改憲を容認する政党や民主党の一部も賛成するかもしれない。そしてこれが実現したら、次の総選挙を待たずに、今度は9条改憲を目指すかもしれない。衆参両院の過半数なら、自民党だけでも確保できるかもしれないし、まして日本維新の会と協力すれば容易だろう。国民投票でも過半数を得ることはできるかもしれないから、そうすれば次の衆議院選挙までに改憲と国防軍創設が可能になる。安倍自民党の公約通りに、戦争ができる国に日本の体制を変革することができるのである。

■上からの国家主義?――戦争の危険性の増幅

 特に筆者が懸念するのは、

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筆者

小林正弥

小林正弥(こばやし・まさや) 千葉大学大学院社会科学研究院教授(政治学)

1963年生まれ。東京大学法学部卒業。2006年より千葉大学大学院人文社会科学研究科教授。千葉大学公共研究センター共同代表(公共哲学センター長、地球環境福祉研究センター長)。専門は、政治哲学、公共哲学、比較政治。マイケル・サンデル教授と交流が深く、「ハーバード白熱教室」では解説も務める。著書に『対話型講義 原発と正義』(光文社新書)、『日本版白熱教室 サンデルにならって正義を考えよう(文春新書)、『サンデル教授の対話術』(サンデル氏と共著、NHK出版)、『サンデルの政治哲学 〈正義〉とは何か』(平凡社新書)、『友愛革命は可能か――公共哲学から考える』(平凡社新書)、『人生も仕事も変える「対話力」――日本人に闘うディベートはいらない』(講談社+α新書)、『神社と政治』(角川新書)など多数。共訳書に『ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業』(ハヤカワ文庫)など。

 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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