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陸上自衛隊に島嶼防衛はできない(上)――弱いリサーチ

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 近年、中国との間で、尖閣諸島など我が国の領土たる島嶼(とうしょ)を巡る防衛に大きな関心が向いている。だが筆者には陸上自衛隊に当事者意識が欠けており、島嶼を守る気も、本気で戦争に備えるつもりも無いように見える。

 むろん筆者は戦争にならない方がいいとは思っている。だが、本気で戦争に備え戦い抜く態勢をつくり、気位を相手に示すことが抑止力となるのだ。逆にやる気の無さを見せれば、相手の冒険主義をくすぐることになり、思わぬことろから武力衝突や戦争に発展する可能性が高くなる。ゆえに「本気で戦争をする、できる態勢」を整えておくことが必要だ。

 前防衛大綱でも、陸上自衛隊による、ソ連を意識した北方重視から西方重視への転換、特に島嶼防衛が謳われていた。ところが陸自はかろうじて西部方面隊に、西部普通科連隊を創設した程度で、まともに対ソ連型戦力の再編成、即ち西方重視、島嶼防衛への努力をしてこなかった。

 北海道の部隊を西方の島嶼に振り向ける機動演習が初めておこなわれたのは、2011年10月である。それ以前はこのような演習すらされてこなかった。

 また諸外国の海兵隊にあたるような水陸両用部隊の編成も遅々として進んでいない。陸上自衛隊幕僚監部が具体的に水陸両用部隊の編成を研究しだしたのは、ここ2年ほどである。それまでこの種の部隊に関する研究はほとんどされてこなかった。

 中国が我が国の島嶼を侵略するのであれば、その尖兵として水陸両用部隊を使うことは容易に予想できる。仮に陸自がそのような部隊を編成する予定が無くても我が方としてはこのような部隊に対抗すべき手段を講じるために、水陸両用部隊の研究は必要不可欠だった。敵を知らなければ戦争に勝てないのは孫子の時代からの常識だ。

 だが、そのような研究はなされて来なかった。仮に陸自がこのような水陸両用部隊を研究していれば、もっと速やかに水陸両用部隊の編成が可能だっただろう。

 これに業を煮やして防衛産業の業界団体である日本防衛装備工業会のGAT研究会が島嶼防衛に関するレポートを作成した。これには過去の水陸両用戦や想定されるシナリオ、必要とされるであろう装備などが示されている。このレポートは筆者からみればいささか空想的なシナリオや想定も多いが、陸幕には大きな影響を与えたようだ。

拡大開発中止となったEFV=提供:米海兵隊

 2011年11月に陸自の総合兵科学校である富士学校の研究会で島嶼防衛に関する発表がおこなわれたが、その内容はGAT研究会のレポートの焼き直しに過ぎなかった。

 しかも認識のおかしさが随所に見られた。一例を挙げれば ・・・ログインして読む
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筆者

清谷信一

清谷信一(きよたに・しんいち) 軍事ジャーナリスト

軍事ジャーナリスト、作家。1962年生まれ。東海大学工学部卒業。03~08年まで英国の軍事誌Jane's Defence Weekly日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関、Kanwa Informtion Center上級顧問。日本ペンクラブ会員。著書に『専守防衛─日本を支配する幻想』『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『自衛隊、そして日本の非常識』『ル・オタク フランスおたく物語』、共著に『軍事を知らずして平和を語るな』『アメリカの落日―「戦争と正義」の正体』『すぐわかる国防学』など。最新刊に『国防の死角――わが国は「有事」を想定しているか』。

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