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軍事情報軽視の日本政府と防衛駐在官の構造的問題

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 アルジェリア政府によるテロリストに対する攻撃で邦人にも多くの犠牲者が出た。小野寺五典防衛大臣はアフリカなどの防衛駐在官の強化を検討していると報じられている。

 だが大臣は防衛駐在官の本質的な問題を理解していないだろう。場当たり的に人間を増やせば情報収集能力が強化されるわけではない。

 筆者は2012年に、WEBRONZA「自衛隊の情報感度と特殊部隊(上)――練度の維持と中東の情報収集は大丈夫か?」「自衛隊の情報感度と特殊部隊(下)――情報収集と分析に金と人を投入せよ」において、政府、防衛省・自衛隊の海外軍事情報、特にアラブ・アフリカの軽視について警鐘を鳴らし、また併せて防衛駐在官の拡充なども提案した。実は筆者は90年代からこのような提案をしてきた。

 だが例えばイランのイスラム革命やペルー大使公邸人質事件などの事件が起きるたびに我が国の情報力の無さが問題視され、ほとんど改善されることはなかった。

 かつての旧軍は先の戦争では情報を軽視、火力と精神力だけに異常な執着を燃やし、結果、連戦連敗を繰り返した。

 だが戦後に登場した自衛隊も同様に、情報軽視の体質を有している。他国では歩兵や砲兵、兵站などに並列して、情報に関する兵科が存在するが、陸上自衛隊に情報科が設立されたのは数年前で、海空自衛隊にいたっては未だに情報科は存在しない。

 我が国の情報活動は貧弱だ。このため軍事情報の収集に防衛駐在官の果たす役割は極めて大きいが、政府は軍事情報の重要性を全く認識してこなかった。

 かつてペルー大使公邸人質事件が生じたとき、日本政府は現地の情報を把握しておらず、特殊部隊による突入作戦の際も蚊帳の外で、当時の池田行彦外務大臣は新聞記者に当たり散らし、橋本龍太郎首相は外務省にあんパンを差し入れるぐらいしかできず、「アンパンマン」と揶揄された。日本政府の右顧左眄ぶりは国際的なインテリジェンス・コミュニティから嘲笑の対象となっていたのである。

 繰り返すが筆者は長年、防衛駐在官のあり方の見直し、アフリカにおける駐在の増強を主張してきたが、現在も事情は全く変わっていない。

 そもそも日本の防衛駐在官と諸外国の駐在武官とは、自衛隊と軍隊が違うように似て非なる存在だ。駐在武官は軍人だが、我が国では「外交一元化」のもと、防衛駐在官は防衛省から外務省に出向した「外交官」扱いになる。防衛駐在官は現地で制服を着用することが多いが、これはいわば「コスプレ」なのだ。当然、防衛駐在官の予算も外務省から出ている。

 つまり、軍人には情報を自由にさせないという偏狭なシステムとなっているのだ。このような異常なシステムをとっている国は、筆者の知る限り我が国以外に存在しない。

 我が国には非公然の諜報活動は許されていない。ならば公然と情報を収集できる防衛駐在官を他国の何倍も予算をかけ、整備するべきだ。だが、現実は逆で、むしろ他国よりも劣っている。これでは耳の短いウサギだ。

 防衛駐在官が外務省の所轄になっていることの問題はいくつかある。

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筆者

清谷信一

清谷信一(きよたに・しんいち) 軍事ジャーナリスト

軍事ジャーナリスト、作家。1962年生まれ。東海大学工学部卒業。03~08年まで英国の軍事誌Jane's Defence Weekly日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関、Kanwa Informtion Center上級顧問。日本ペンクラブ会員。著書に『専守防衛─日本を支配する幻想』『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『自衛隊、そして日本の非常識』『ル・オタク フランスおたく物語』、共著に『軍事を知らずして平和を語るな』『アメリカの落日―「戦争と正義」の正体』『すぐわかる国防学』など。最新刊に『国防の死角――わが国は「有事」を想定しているか』。

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