2013年02月22日
このような軍事見本市は単なる商取引の場ではなく、ホスト国とはもちろん各国の軍隊との交流の場でもある。
当然ながら軍同士の情報交換や人脈形成の場でもあり、非公式な接触を通じての信頼熟成の場でもある。
中国はこの手の見本市には毎回大型の代表団を送り込んでいるが、今回も制服組だけでも15名ほどの代表団を送り込んでいる。
対して自衛隊のデリゲーション(派遣団)の参加はなかった。防衛省、自衛隊はこのような形での諸外国の軍との交流に非常に不熱心だ。
またサウジアラビアやエジプトなど近隣諸国の防衛駐在官の参加も筆者の知る限り、これまで同様になかった。
日本の防衛駐在官は外務省に出向しており、身分は外交官だ。防衛省に属する自衛官=「軍人」ではない。
彼らは大使が許可をしないとこのようなイベントに参加できない。また防衛駐在官の予算が少なく、出張が出来ないことも多い。
恐らく外務省には「軍人に外交をさせたくない」という思惑もあるのだろう(WEBRONZA「軍事情報軽視の日本政府と防衛駐在官の構造的問題(2013/01/26)を参照」)。
本来、防衛省や自衛隊にとって、このような場での情報交換やプレゼンスの維持は国益上必要だ。
だが日本のプレゼンスは皆無だ。特にアラブ世界では尚武の気風が強い。このような地域で自衛隊のプレゼンスが皆無に近いのは外交上大きな損失だ。だが、防衛省はもちろん外務省にはそのような認識が欠けており、意図的に軍事情報を排除したがる雰囲気がある。
だから最近起きたアルジェリアの事件でも、アルジェリア当局からもアラブ諸国からも、英仏ら欧州の国からも情報収集が出来なかった。
しかも筆者が取材した限りでは外務省はアルジェリアの現地の協力者からの協力を拒んでいた。さらに外交手腕が稚拙で、アルジェリア政府とのしこりも生み、事後にはアルジェリア政府から日本の外交官の入国に際して嫌がらせをされたなどの仕打ちまで受けている。外務省の「軍事音痴」は犯罪的なレベルといってもいいだろう。
今回のIDEXで唯一、日本のプレゼンスを示したのはオープニングセレモニーにおける、太鼓のパフォーマンスだった。もっとも太鼓を叩いていたのはほとんど外国人だったが。
一方、中国の存在感は出展でも顕著だ。中国のパビリオンは年々拡大の一途を辿っており、装甲車輛などの実物兵器の持ち込みも増えている。
中国関連で今回注目すべきは、スーダンの出展だ。今回、スーダン政府は初めて出展したが、そのブースは初出展にしては不自然に大きかった。スーダンでは中国が兵器を生産しており、これがかつて国内で武力弾圧に使用されて問題にもなっている。
今回、出展された兵器の多くは中国オリジンのものであり、コンポーネントにも中国製が多数使用されていた。
同国の兵器産業はほとんど中国に頼って成立していると言ってよい。
通常であればテクニカルな説明やセールスの経験がほとんどないスーダン人に代わって、あるいは彼らの手助けのために中国人がブースに詰めていても不思議ではない。
実際、地元アブダビを始め、新興の兵器生産国のブースでは「お雇い外国人」の姿を見ることが多い。
だがスーダンのブースには中国人が全くいないし、出入りも見られなかった。これは極めて不自然だ。
これは筆者の推測だが、スーダンの出展は
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