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東アジアの国際結婚ブームは去ってしまうのか

団藤保晴

 21世紀に入って国籍の壁など吹き飛ぶのではないか、とも思わせた東アジアの国際結婚ブームが急速にしぼみつつある。最新2011年統計では、2005年に結婚件数の13.6%もが国際結婚だった韓国が9.0%に、2006年に6.1%だった日本が3.9%まで落ちた。

 何が起きているのか調べてみると、日本については実質経済成長率の増減に支配されていると判明した。韓国の成長率は日本より高いからなお意欲的と考えられるが、ベトナム人妻の悲劇などがあって韓国・ベトナム両政府が規制を始めた。嫁不足トレンドの根底は経済発展によりアジアの都市女性が自立し、結婚しなくなった点にある。経済成長著しい上に、一人っ子政策の影響で男女比が男に偏している中国の男性がどう動くか注目だが、断片的な情報しか伝わってこない。

 上のグラフは人口動態調査などから作成した、日本の過去20年間の国際結婚数と経済成長率の推移を示している。相手国籍別の動向を見るにはグラフ下部を利用して欲しい。夫婦どちらかが日本人の国際結婚数は2011年には1990年代始めレベルまで下がってしまった。その1990年代に何があったのか――このグラフで一番の注目は、消費税増税のあおりでマイナス成長に落ち込んだ1998年からの動きである。

 実質経済成長率の動きを1年遅れて国際結婚数が追いかけているのは明瞭だ。途中で変化が起きて、2005年の成長やや停滞にもかかわらず結婚数が伸びた。このころフィリピン、中国、ロシア、インドネシアから年間13万人前後の若い女性が興行ビザ(タレントビザ)で入国、全国各地の夜の街で男女の接触が増えたからだ。それがアメリカ国務省の人身売買報告書(2004年)で非難されてからビザ厳格化が進んで、フィリピンやその他の国との国際結婚が激減していった。

 タレントではない女性を排除する興行ビザ規制の影響が去っても減り続ける国際結婚数は、最初の傾向に戻って実質経済成長率の動きと連動している。リーマンショック後の2010年には、あまりに大きかった落ち込みの反動で数字だけはプラスに戻っても庶民の懐感覚はマイナスに振れたままである。このグラフで見ると、実数が大きい中国人との国際結婚数の推移が、1年遅れで経済成長率の動きをよく追いかけているのが読みとれる。2001、2002年の経済停滞がきれいに反映されている。第344回「急速に縮む国際結婚の謎判明:経済成長率に依存」を見ていただくと、過去の経緯や参照記事リストがある。

 2月11日のソウル聯合ニュースによると、2002~2011年の10年間に韓国の国際結婚は32万6794組、この内、外国人妻が24万5362組だった。同時期の日本がそれぞれ36万5386組、28万4993組だったのだから、人口が日本の4割ほどしかない韓国でいかに国際結婚が盛んだったのかが分かる。経済発展から取り残されがちな地方ほど顕著であり、2005年には農村地域の男性の35%が国際結婚だったと報じられた。外国人妻の国籍は中国が53%を占めるものの多くは中国に住む朝鮮族であり、顔つきも言葉も韓国人と変わらない。2位ベトナムが5万9687人、3位フィリピン1万3785人と大きな数になって、本格的な外国人妻との共生が問題化した。

 2010年7月に釜山で、20歳のベトナム人女性が結婚1週間で夫に惨殺されて社会問題になった。事前の説明が貧弱で、話が違うと外国人妻が支援団体に駆け込む例も多い。もちろん韓流ドラマのような華やかな生活が待っていることなどない。国際結婚斡旋業者に頼む際、韓国人男性は10歳から20歳も年下の女性を好むために、「一種の人身売買」と国際的な非難を受けている。2011年に韓国の国際結婚が大きく目減りしたのは、韓国とベトナム両国で規制が立ち上がったためだ。韓国の実質経済成長率は2011年でも3.63%あった。

 韓国人男性にとって

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