2013年03月04日
このような情勢の下では、野党各党にできるのは、内閣の「尻を叩く」ことである。「これでは物足りない。もっとやれ」と発破を掛けるのが、野党の役割である。
一九七〇年代後半、爆発的な人気を誇った女性アイドル・デュオ、ピンク・レディーが歌った『ペッパー警部』(作詞/阿久悠)の歌詞の一節は、次のようなものであった。
ペッパー警部 邪魔をしないで…
ペッパー警部 私たち これから いいところ…
アベノミクスと呼ばれるものに対する評価は、色々とあるけれども、それに対する期待で、「私たち これから いいところ……」と世の人々が感じ始めている折に、「邪魔をしないで……」と煙たがれる対応は、率直に歓迎されないものであろう。
野党各党は、少なくとも今は、そうした対応に走るわけにはいかない。先刻、安倍内閣が提出した補正予算案は、参議院では一票差にせよ野党議員が賛成して可決、成立したけれども、そのことにも、「邪魔をしないで……」という批判を向けられるのを怖れる議員心理が反映されている。
因みに、とある大手都市銀行株価は、昨年十月中旬頃、一二〇円前後で推移していたけれども、二月中旬時点で二〇〇円を超えている。この銀行株に限らず、野田佳彦が衆議院解散を宣言した昨年十一月以降、株価が倍近くになった株は、結構、多いのである。
これは、日経平均株価が昨年十月中旬時点の八五〇〇円前後から二月中旬の一万一五〇〇円前後に騰(あ)がったという事実以上に、経済における「熱」の復活を示しているであろう。こうして「熱」が戻ってくると、それを半ば煽るような展望も徐々に出て来る。
現に、野村證券は、今年末に日経平均株価が一万四五〇〇円に達するという展望を出している。投資に手を染めている人々ならば、「私たち これから いいところ……」と反応するであろうし、そうでない人々ですらも、給与やボーナスの加増を通じて、「私にも、いい思いをさせて……」と期待するのは、当然の成り行きであろう。
こうして考えると、特に野党に転落した民主党の再建は、三年五ヵ月前に下野した折の自民党よりも、険しいものであるといえるであろう。たとえば、海江田万里(民主党代表)は、『朝日新聞』(二〇一三年二月二七日配信、電子版)記事によれば、アベノミクスを評して、「今の状況は花火のようなもので、ドーンと打ち上げても、星座と違って夜空に一晩中ずっと輝いているわけではない。『たまや~』、『かぎや~』と言った後には、消えてなくなるものだ」と語った。
しかし、海江田の発言に示されるように、民主党が野党に徹する姿勢で安倍内閣を批判したとしても、
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