2013年03月13日
前稿「なぜ政治学者は沈黙しているのだろうか?――政治科学と改革派政治学の蹉跌」(2013/02/25)で筆者は、改革派政治学が選挙制度改革を政治改革とみなしたことをその問題点として指摘した。この結果、二大政党化が行き詰まると、改革派政治学は力を失ってしまったのである。
これは、政治学だけの問題ではない。そもそも、もともとは改革を主張していた民主党が大敗北し、小沢グループも「日本未来の党」として戦ったが、敗北を免れなかった。小沢一郎氏はかつて「選挙制度改革≒政治改革」を主導し、民主党はその流れから成立して今のような選挙制度を支持してきた。こういった近年の「改革派」の政治全体が総選挙で壊滅的打撃を蒙ったのである。
日本政治を「改革」という観点から見ると、選挙制度改革が政権交代へつながった。そして、自民党中心の政権に戻った途端に、(第1次安倍内閣に続き)第2次安倍内閣が参議院選挙で大きく勝利すると改憲を企てるかもしれないという状況にある。「選挙制度改革→政権交代→改憲」というようにスケールアップしているのである。
しかし、本当に必要なのは改憲なのだろうか? ここを見つめてみる必要がある。安倍自民党を支持した多くの有権者はむしろ経済が回復することを望んでいるから自民党に投票した、と思われるのである。そこで、選挙制度改革そのものが本当に望ましい「政治改革」だったかどうかを振り返って考えてみよう。
■小選挙区制度の問題点の顕在化
そもそも、小選挙区制度には、二大政党化を進めて政権交代を可能にするという利点の反面として、「(1)死票が数多く出て、民意を正確に代表することができない。(2)無理に二大政党に集約するため、代表されない政策が数多く現れる」というような問題点が指摘されてきた。
この問題点は、今回の総選挙の結果に極めて明確に現れている。自民党は比例区の得票率では27.6%で2009年の26.7%とほぼ変わらなかったのに、議席は全体で118議席から294議席へと増加して圧勝した。
つまり、投票率・支持率は実は前回より漸増したにすぎないのに、衆議院では圧倒的多数を持ったのである。この結果、次の衆議院選挙まで相当程度まで思う存分に政治が行えることになる。ところが、これは実際の民意と大きく背反する可能性があるのである。
他方、前回の民主党が230議席だったのが57議席となり、多くの選挙区で議席は民主党から自民党へとオセロ・ゲームのように変わった。そして、非自民党勢力は共倒れに終わった選挙区が多かったため、第3極は予想したほど伸びが見られなかった。たとえば未来の党は得票率では比例区では5.67%なのに議席では全体で9議席しか得ることができなかった。これらは、まさしく小選挙区制度の結果である。
この激しい変動を見て、メディア
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