2013年03月21日
オバマ自身の言葉に、その答えを探そうとすれば、その演説を振り返るしかないだろう。2期目に入ってからの最初の実質的な意味での大きな演説は、2月の一般教書演説であった。内政に重いスピーチであった。外交への言及は、薄かった。それぞれイスラエルとイランに1回、シリアに2回言及したのみで、パレスチナ問題には言及すらなかった。
代わりに強調されたのは、銃規制の問題であり、移民法の改正であった。銃の問題に関してはNRA(ナショナル・ライフル・アソシエーション)と呼ばれるロビー団体がある。銃規制の提案の実現を阻止し続けてきた団体である。国内問題ではアメリカで最強のロビー組織の一つとして知られる。
この組織との対決をオバマが決断したとすれば、それは「ポリティカル・キャピタル(政治的資本)」を使い尽くすほどの戦いとなろう。また、この問題を副大統領のバイデンが担当するとすれば、ポスト・オバマを目指すバイデンにとっては負けられない戦いとなる。しかも共和党の支配する議会との対立から強制的な歳出削減という事態が到来している。となると2期目のオバマの軸足は内政にあり、外交ではないと読むのが妥当ではないだろうか。
こうした内政重視を背景として、オバマの2期目の外交政策が展開される。その外交の中での中東の位置は、大きいものの圧倒的な存在感を示すということにはならないだろう。
しかもアメリカは今、シェール革命に沸いている。シェール・ガスと石油の増産により中東の石油が必要となくなる日が視野に入ってきている。近い将来にアメリカはエネルギーの輸出国として登場するだろう。「サウジアメリカ」という言葉さえ流通するようになった。アメリカの世界認識に占める中東の姿は小さくなりつつある。
内政重視であり、しかも中東の地位がアメリカの視野の中で小さくなっている。そうした大きな構図の中でオバマの今後の中東政策を見る必要があるだろう。
外交のための大きなエネルギーがオバマ政権に残っているだろうか。国内問題で最強のロビー団体のNRAと戦い、その後に外交問題で最強のロビー団体とされる親イスラエルのエイパックAIPAC(アメリカ・イスラエル公共問題委員会)と戦えるだろうか。と見てくるとパレスチナ問題での大きな動きは予想しづらい。
オバマ政権の中東政策の焦点は、イランの核問題であり、シリアの将来であろう。イランとシリアが同盟国であるので、両者は密接にリンクしている。この面でオバマ政権の方向を予測する手がかりは人事である。組織においては、往々にして人事が万事である。
アメリカ政府も例外ではない。
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