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貧しいけど、愉しい共産国・キューバ(下) 経済改革に「キューバ流」を徹底

 キューバの1人当たり国内総生産(GDP)はせいぜい5000ドルで、ラテンアメリカ諸国の中でも貧しい方に属する。低所得の原因は、何といっても、半世紀を超える米国による厳しい経済制裁である。海外からの投資、石油をはじめとする燃料、工業原料や部品の輸入、技術導入などを徹底的に封じられてきたのだから、工業を発展させることはほとんど不可能だった。

 もう1つの原因は農業政策の失敗である。かつて、キューバが食料輸出国だった時期もあったが、現在は大幅な入超である。キューバの土壌があまり農業に適していないことを考慮しても、全国1100万ヘクタールの農地の18%が耕作されていない事実は、政策失敗の証拠といわれても仕方ないであろう。

 農業地帯を国道沿いに車を走らせてみると、穀物、サトウキビ、コーヒー、タバコ、野菜などを耕作している土地は多くなく、荒れ地が目立つ。半分以上が牧草地で、それほど多くない牛や馬が放牧されている風景を各地で見かける。

 政府も政策の失敗を認め、数年前から農地規制の緩和など農業改革に着手したが、打った手が中途半端で成功せず、昨年春から農民に貸与する国有農地の規模を13ヘクタールから67ヘクタールに拡大するなどの新改革に取り組んでいる。

 農林省が特に力を入れているのが有機農業の推進だ。穀物、野菜、果物などの生産力を高める一方で、牧畜業を発展させて、その糞尿などを利用して有機肥料をつくるように農民を指導している。この事業の手足になっているキューバ農業技術者協会幹部のラブラダ・バルカルス氏は次のように話す。

 「1959年の革命後、キューバも他国と同様、化学肥料を使って農業生産力を引き上げようとした。しかし、化学工業を発展できなかったので、農業も肥料不足で衰退してしまった。キューバの農業は伝統的に有機農業だった。いま進めている有機農業化は化学肥料不足を逆手に取ったもので、伝統技術と近代技術の融合だ。農産物の有機化率はすでに30%に達している。

 技術指導以外の補助政策もある。数軒、数十軒の農家が協同組合をつくるなどの集団経営化政策も進めている。個人、協組を問わず、融資制度も設けた。いまのところ、新農業改革に対する農民の反応は十分とはいえないが、彼らの姿勢は次第に積極性を増している。農民側から意欲あふれる新しいアイデイアが提案される例も増えている」

拡大たわわに実る有機野菜=アラマール農場

 有機農業ですでに顕著な実績をあげているのは都市地域の有機農場である。その1つ、ハバナ市郊外のアラマール農場は協同組合組織で約12ヘクタールの農地を所有、野菜を中心に観葉植物、ハーブ、果物などを栽培し、牧畜も幅広く行っている。大学で生物学や環境学を学んだ技術者が20数人働くなど技術レベルが高く、ミミズを利用した肥沃土づくりにも成功している。利益も相当挙げているようである。

 同農場幹部のナランホ・ベルデスさんは「都市有機農業を行っている協同組合は全国で約1万2000あり、年100万トン以上の野菜を生産している。都市に限らず、野菜の有機化率は60%に達している。今後、この率が高まることは間違いない」と述べている。

 キューバは、やはり経済の弱点であるエネルギー部門の改革も急ピッチで進めている。政府は今春からエネルギー部門の一部を国営会社に改編して風力、太陽光など自然エネルギーの開発に一段と力を入れる。太陽光にせよ風にせよ、自然条件に恵まれているからだ。

 しかし、開発の障害となるのは、やはり米国による経済制裁である。キューバが比較的自由に購入できるのは

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