2013年04月23日
治安対策の強化や過激組織の取り締まり等、いわばハード面での対策は当然とられるであろう。しかしそれと並行して、いやそれ以上に筆者が重要だと考えるのは、テロリストを生みだす社会構造を変革するソフト面での対策だ。中でも、突飛に聞こえるかもしれないが、米国政府が自国の歴史問題に向き合い、取り組んでいくことが不可欠であると考える。
ここでいう歴史問題とは、米国が超大国になった20世紀半ば以降今日まで、国際社会に自由や人権、民主主義を普及させてきた裏で、自らの価値と相入れないとされる「他者」を作り出し、そうした他者の側にいる数知れない弱い人々に暴力を振るってきた――少なくとも「他者」の側の人々の多くはそのように受け止めている――ことである。
すでに指摘されている通り、ボストン爆破テロはホームグロウン・テロ、すなわち欧米諸国内の移民や留学生などが、自らのおかれた状況に対するやり場のない怒りを溜め込み、それを当該国社会あるいは米国を中心とした国際社会全般への憎悪と重ね合わせて、テロリズムという形で爆発させるものである。
その意味で、実行犯ツァルナエフ兄弟の行動背景は、「9・11」同時多発テロ実行犯のモハメド・アタが、ヨーロッパ留学を経て過激イスラーム主義へ傾倒し米国への攻撃を行ったメカニズムとつながっている。
アタももとはキャリアアップを目指して建築学を学ぶ「普通の留学生」であり、まじめでもの静かな人物だったという(詳しくは朝日新聞アタ取材班編『テロリストの軌跡――モハメド・アタを追う』草思社、2002年を参照)。
なぜムスリムの移民からテロを志す者が生まれるのか。イスラームの聖戦(ジハード)思想が指摘されることがあるが、筆者はむしろ、たまたまムスリムであった「普通の移民」の個人的な怒りのスイッチを、米国社会に対する暴力へ切り替えさせる要因がどこにあるのかに、ホスト社会である米国の側が注意する必要があるように思う。
ここで注目したいのが、
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