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「第3の矢」の核心は、労働移動支援型の政策だ

鈴木崇弘 城西国際大学客員教授(政治学)

 現政権による経済政策、いわゆる「アベノミクス」は円安による輸入品の価格上昇などマイナス要素も生まれているが、安倍晋三首相の打ち出し方、イメージ先行によって、市場が好感を示し、景気も徐々に上向き傾向にあるようだ。

 このアベノミクスは、「大胆な金融緩和」、「機動的な財政出動」そして民間投資を喚起する「成長戦略」のいわゆる「3本の矢」からなる。その3本のうち、はじめの2つについては、新総裁の決定を含めた日銀の金融政策の変更や補正予算の成立などで、矢継ぎ早に方向性を打ち出した。そして、この2つの矢は、これまでの日本経済の低迷を打破するいう点では意味があるが、どちらかといえば容易で、短期的な効果をもたらすものだ。

 これに対して、最後の矢である「成長戦略」は中長期的なものであり、その実現は容易ではない。だが、アベノミクスで最も重要なのは、この成長戦略でなければならない。安倍政権は、具体的な政策や中身をあまり打ち出していないが、首相の発言や産業競争力会議などを見ていると、「再生医療」など医療医薬関連の政策は一つの柱に考えているようだ。しかし、どの分野を対象にするかは市場や民間が決めればいいことであり、政策的に重要なのは環境や条件の整備だ(注1)。

 その点から考えると、メディアではあまり大きな話題になっていないようだが、安倍首相が、4月2日に開催された第6回日本経済再生本部でのあいさつで言及した「行き過ぎた雇用維持から労働支援型への政策転換を行うための具体策を策定してもらいたい」という要望は、非常に重要だし、注目に値する(注2)。

 成長戦略が重要性をもつためには、経済における構造改革につながる必要がある。だが、構造改革のためには、当然、社会における人的流動性を生みださなければならない。

 終身雇用、年功序列型の社会で人的流動性が高まることは、職を失い、収入源を失い、生活できないリスクが高まることでもあった。このため、かつては一つの会社や組織にしがみつく人が多かったのである(注3)。企業も、高度成長と相まって、人材を囲い込み、成長してきた。

 これが逆に転職を難しくさせてきた。また、転職は社会的に好ましくないという雰囲気も支配的だった。最近は以前より転職しやすくなっているが、景気の低迷により、転職しにくい状況が生まれていた。その結果、多くの人材が企業や役所で活かされず、あるいは職場に適していないにもかかわらず転職もできず、「職場内失業」したりしている。さらに、職場不適応を起こしている人材も多いと聞く。これでは、組織的にも社会的にも個人的にも、人材や才能を浪費してしまっていることになる。

 このような状況を改善するには、安倍首相が指摘しているような ・・・ログインして読む
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筆者

鈴木崇弘

鈴木崇弘(すずき・たかひろ) 城西国際大学客員教授(政治学)

城西国際大学大学院国際アドミニストレーション研究科客員教授。1954年生まれ。東京大学法学部卒。マラヤ大学、イースト・ウエスト・センターやハワイ大学大学院等に留学。東京財団の設立に関わり、同財団研究事業部長、大阪大学特任教授、自民党の政策研究機関「シンクタンク2005・日本」の設立に関わり、同機関理事・事務局長などを経て現職。中央大学大学院公共政策研究科客員教授。著書に『日本に「民主主義」を起業する――自伝的シンクタンク論』『シチズン・リテラシー』『僕らの社会のつくり方――10代から見る憲法』など。

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