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 日本経済再生本部が5月10日に、その中間提言を発表した。

 それは、安倍政権の経済政策、いわゆるアベノミクスの推進を与党の側から支援しようというものであろう。その柱は、次の5点からなる。

1.地方再生なくして日本再生なし

2.「アジアNO.1の起業大国」へ

3.新陳代謝加速、オープンで雇用創出 

4.未来の「ヒト」」、「ビジネス」で付加価値創出

5.女性が生き生きとして働ける国へ

 これらの点は、アベノミクスのうち特に「第3の矢」といわれる「成長戦略」を進めていく上で中心になるものとして提言されている。

 だが、本記事でその是非について論じるつもりはない。なぜなら、この提言の重要なポイントは別のところにあるからだ。それは、この政策提言の作成手法におけるメッセージにある。

 2009年の政権交代以前、自民党は一部を除いて(注1)、基本的に政権与党として、主に官僚機構に依存する形で政策を形成してきた。簡単にいえば、官僚が政策案を作成し、それに対して議員の意見を活かしながら、官僚が調整し、政策最終案を与党内で作成する。そして、その最終案を国会で形式的に審議にかけ、承認を得るというやり方だ。

 しかしながら自民党は、政権交代で野党になると、官僚機構の支援協力を得られなくなった。筆者も関わった、野党時代に作成された成長戦略「日本フェニックス――戦略決断と実行の3年間(中間報告、2010年5月14日)」も、官僚の力を借りずに外部人材の協力のもとに作成した。

 2012年末、政権与党に復帰した自民党は政策や法案作りで官僚依存に回帰するのではないかと予想された。だが、今回の日本経済再生本部の中間提言の作られ方をみると、どうやら違う面が生まれているようだ。

 では、具体的にみていこう。それは大きく分けると、「党内及び政府等との議論や調整」と「外部人材の活用」の2つのアプローチの組み合わせだ。

(1)党内及び政府等との議論や調整

 次のような党内議論や作業を経て、さらに政府との調整が行われた。

*経済再生本部での議論

*議員による作業グループの設置・議論・提案

・主に当選1~2回の若手議員を中心に作業グループを編成。経済再生本部とは別に議論を行い、提言提出。

・作業グループは次の8つのテーマごとに設置

 「マクロ金融財政経済政策」(主査:山本幸三)、「地域経済再生」(主査:上野賢一郎)、「経済再生に資する規制改革」(主査:牧原秀樹)、「労働力・生産性向上」(主査:磯崎仁彦)、「金融資本市場・企業統治改革」(木原誠二)、「経済再生に資する教育改革」(主査:薗部健太郎)、「戦略産業」(主査:長谷川岳)、「研究開発」(主査:鈴木馨祐)。

*地域の声の集約や地域の参加性の向上

・総理指示のあった地域経済再生への提言に関して実施

・自民党の各都道府県連の政調会長を本部長とする「地域経済再生本部」の立ち上げ

・上記各地域経済再生本部が、各都道府県別の経済再生策を提案

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筆者

鈴木崇弘

鈴木崇弘(すずき・たかひろ) 城西国際大学客員教授(政治学)

城西国際大学大学院国際アドミニストレーション研究科客員教授。1954年生まれ。東京大学法学部卒。マラヤ大学、イースト・ウエスト・センターやハワイ大学大学院等に留学。東京財団の設立に関わり、同財団研究事業部長、大阪大学特任教授、自民党の政策研究機関「シンクタンク2005・日本」の設立に関わり、同機関理事・事務局長などを経て現職。中央大学大学院公共政策研究科客員教授。著書に『日本に「民主主義」を起業する――自伝的シンクタンク論』『シチズン・リテラシー』『僕らの社会のつくり方――10代から見る憲法』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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