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国際反ホモフォビアの日に――未来は私たちの前ではなく、私たちの内にある

土井香苗 国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表

<本稿はLGBTの権利プログラム・アドボカシーディレクターであるボリス・ディトリッヒ氏(Boris Dittrich)との共同執筆である>

 毎年5月17日、世界中の人々は国際反ホモフォビアの日を祝い、平等で差別のない社会を実現するにはどうすればよいのかに思いを馳せる。

 東京では一足早く、4月27日に東京レインボーウィークが幕開けした。日本のレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー(以下LGBT)の人々は、あらゆる差別から守られ、婚姻の平等を保障する反差別法の実現を願っている。一方、世界各国では、LGBTの人々の様々な願いが危機に瀕している。

 カメルーンでは、「私はあなたに恋しています」と書いた携帯メッセージを男性宛てに送った若い男性が懲役3年の刑を言い渡された。

 更に、その男性を弁護した勇敢な弁護士のもとには、彼の妻と子どもたちを殺すといった脅迫メールや携帯メッセージが届いた。弁護士が殺害脅迫を受けたことを警察に訴えたところ、警察は「ゲイの弁護を止めさえすれば安全さ」との一言。つまりカメルーンでは、愛のメールを送った者は投獄される一方、子どもを殺すと脅しても当局は見て見ぬふりをするのだ。

 ジャマイカでは、レズビアン、男性と性的関係を持った男性、トランスジェンダーの人々が、時には死に至ることもあるほど残虐な暴力の被害に遭っているが、多くの場合、警察による保護はほとんど期待できない。

 LGBTであること、あるいはLGBTであると見なされたために受ける恐喝・嫌がらせ・暴力から逃れるため、多くの人々が家族、地元のコミュニティ、そして時に母国からも離れざるを得ない状況だ。国内に留まったとしても、残されているいのは街頭での生活や仕事の道しかないことも多く、ギャングによる暴力や他の虐待に遭う危険性を高めている。 

 ロシアとウクライナの議会では、「同性愛の助長」を禁止する法案が審議中だ。同国の国会議員によれば、LGBTの象徴であるレインボーフラッグがついたTシャツを着ている、あるいは10代のゲイとレズビアンの自殺防止に関するテレビ討論を見た子どもは、ある日突然ゲイやレズビアンになる可能性があるそうだ。欧州人権裁判所の判決にもかかわらず、両国はLGBTの団体や個人に対し、表現・集会・結社の自由を行使する権利を否定し続けている。

 マレーシアとクウェートの警察は、異性の衣類着用を禁止する国内法に違反したという理由で、トランスジェンダーの女性を頻繁に逮捕している。女性用衣服が犯罪の証拠とされるため、トランスジェンダーの女性は多くの場合、警察署内で裸になるよう強制された上で、男性収容者のいる留置場に放り込まれ、性的虐待の危険にさらされている。

 これらはレズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダーの人々が世界中で直面する現実のほんの僅(わず)かな例に過ぎない。ヒューマン・ライツ・ウォッチはこれらのケースを調査しており、その結果を基に差別と人権侵害について議論するが、その際に以下のような虚偽の主張と対峙することが多い。

1.同性愛は発展途上国に押し付けられた西洋の概念である。

2.同性愛は伝統・宗教・文化的価値観に反しており、従って禁止されるべきである。

3.LGBTの人々は、新しく特別な権利を要求している。

 今年も5月17日の国際反ホモフォビアの日を迎えるにあたり、これらの主張の誤りを明らかにしなければならない。

1.同性愛は ・・・ログインして読む
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筆者

土井香苗

土井香苗(どい・かなえ) 国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表

国際NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ日本代表。1975年生まれ。東大法学部在学中の1996年に司法試験に合格後、4年生の時、NGOピースボートで、アフリカの最貧国エリトリアへ。同国法務省で1年間、法律作りを手伝うボランティア。98年に大学卒業、2000年に司法研修所終了。著書に「“ようこそ”といえる日本へ」(岩波書店 2005年)など。

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