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東日本大震災の復興予算の流用は、支援した海外の思いにも反する

鈴木崇弘 城西国際大学客員教授(政治学)

 読者の多くもご存じのように、東日本大震災の被災地の復興は、いまだ著しく進展しているとはいえない。今後も多くの資金が必要とされることが予想される。

 こんな中、少し前に公表されたものだが、「東日本大震災への海外からの支援実績のレビュー調査(報告書)」(注1)という興味深い資料を入手した。

 この報告書は、東日本大震災について海外から受けた支援の全体像を整理、分析したものである。これをもとに、ポイントをみていきたい。

1  支援における全体の傾向

(1)支援傾向:

・国を超えた支援の受け渡しが、政府・国際機関の支援、民間企業、NGO・団体等、市民社会全体を包含した形で実施

・このような傾向は、今回の災害でも、再度確認

(2)支援国の広がり:

*支援国・地域

・174ヶ国・地域のうち、119ヶ国・地域が日本のODA対象国からの支援

・非常に貧しい国々や政情、経済が安定していない多くの国々からも支援

*支援の潮流

・大災害に対する国際的な相互扶助の精神は世界的な潮流である。その精神が日本に対しても発揮

・ODA等の過去の日本の援助に対する感謝に言及する多数の国々の存在

(3)特色ある支援:

・海外の企業の物的支援や人的支援では、企業や業界の専門・特性・知名度を生かした多くの支援の存在

・各国はその特色を生かした支援を実施

(4)海外支援受け入れの難しさ:

・外国からの人的・物的支援の受け入れは、マッチングや通訳など様々な調整の必要性などの理由から困難

・申し出の一部は受け入れ困難

2 今後の課題

・途上国での災害支援では国連等が主導的に情報を取りまとめるが、日本には、海外からの支援情報を取りまとめる仕組みが不在

・支援情報は散在し、データ整理手法も一律でなく、統一的な視点での整理・分析は困難なので、そのための対応が今後必要

・支援活用状況、被災地の実態や支援の受け入れ体制等の調査の必要性

 本報告書には、以上のようなポイントのほかに、具体的な被害状況や支援した国名、組織名、具体的な支援項目、支援実態も描かれている。さらに支援の実例をコラムとして取り上げており、支援の全体像ばかりではなく、具体的状況がイキイキと描かれており、資料的にも非常に価値がある。

 また、この資料の作成が、行政ではなく、民間主導で行われ、より客観的な立場からまとめられている点も重要である。

 さらに本報告書は、英語版も作成されており、国際開発センター(IDC)のHPから、ダウンロードできるようになっている。恩義を得た日本から世界への返答という意味からも評価できる。

 当然、災害は繰り返されないことが望ましいが、起きてしまった場合の被災国のマナーとして、このような報告書の作成と発信は国際的な慣習になるべきだろう。そして、この蓄積は、災害時に、被災国や支援する国・地域や組織の対応についてのノウハウや知見になる。それは、災害の復旧や復興の効率化や短期化、被害の最小限化にもつながり、国際社会の安定と平和にもつながる。

 これらの点からも、本報告書やそれを作成したIDCの役割を大いに評価したいと思う。

 以前のWEBRONZA記事「東日本関東大震災におけるもう一つ大切なこと」(2011年3月24日)でも記したように、関東大震災後、後藤新平は、海外からの援助も含めて調査したことを報告書にまとめており、そのあとがきには、その作業のために資金を拠出した方々への謝辞も掲載されていたという。

 この報告書のように、海外の支援の全体像を把握し総括して、フィードバックすることは、海外からの思いに的確に応えるためにも日本の当然の責務と考えられる。

 その意味でも、東日本大震災に対する多種多様な海外からの支援を整理・分析し、公開された本報告書の意義は非常に大きいといえる。

 さて、本報告書を読むと、国や地域の大小や貧富の違いにかかわらず、日本が世界から受けた支援の大きさがわかる。それは、これまでに築いてきた諸外国との良好な関係ばかりでなく、諸外国の方々の東日本大震災への同情・共感や思いの結果であろう。ここで述べられた内容を知れば知るほど、いただいた支援の使途や成果が気になってくるのは当然のことだろう。

 そんなときに、朝日新聞の6月3日付の一面トップに「復興予算 雇用でも流用 被災地以外に1000億円」という記事が出た。復興予算が、震災とは関係ないことに相変わらず流用されている事実を伝えている。つまり、流用項目の是非は別としても、

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筆者

鈴木崇弘

鈴木崇弘(すずき・たかひろ) 城西国際大学客員教授(政治学)

城西国際大学大学院国際アドミニストレーション研究科客員教授。1954年生まれ。東京大学法学部卒。マラヤ大学、イースト・ウエスト・センターやハワイ大学大学院等に留学。東京財団の設立に関わり、同財団研究事業部長、大阪大学特任教授、自民党の政策研究機関「シンクタンク2005・日本」の設立に関わり、同機関理事・事務局長などを経て現職。中央大学大学院公共政策研究科客員教授。著書に『日本に「民主主義」を起業する――自伝的シンクタンク論』『シチズン・リテラシー』『僕らの社会のつくり方――10代から見る憲法』など。

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