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東日本大震災で防衛省の無人機はなぜ飛ばなかったか(1)――墜落を恐れた?

清谷信一 軍事ジャーナリスト

防衛省の国会答弁は信用できるか

 防衛省は国会における議員の質問に真摯に回答しているのだろうか。筆者は非常に疑問を感じている。防衛省が政府、あるいは議会に対して十分な、そして正しい情報を発信していないとするならば、それは文民統制上、非常に由々しき問題だ。

 4月25日の衆議院予算委員会第一分科会で、日本維新の会の中丸ひろむ議員の質問に対して徳地秀士防衛政策局長が答弁したが、多々疑問・疑惑の残るものであった。

 中丸議員は東日本大震災に際して、陸上自衛隊が保有する観測および偵察用ヘリ型UAV(無人機)2種類が一度も飛ばなかったことについて質問した。

 陸自は2種類のヘリ型UAVを運用している。その一つが特科(砲兵)観測用のFFOS(Flying Forward Observation System)だ。2001(平成13)年度から調達が開始され、富士教導団、西部方面特科隊にそれぞれ、一式配備されている。一式の調達コストは45億円である。

 もう一つはFFOSの発展型で、偵察用に開発されたFFRS(Flying Forward Reconnaissance System、長距離偵察システム)だ。こちらは2010(平成22)年度から配備が始まり、西部および中部方面隊の無人偵察隊に1セットずつが配備され、北部方面隊には0.5セットが配備されている。ちなみにFFOSもFFRSも1セットは地上局と4機のUAVからなる。

 中丸氏は「これらUAVは(東日本大震災おける)福島の災害において使用されたか」と質問し、対して徳地防衛政策局長は、「FFOSなりFFRSというものにつきましては、当時使用しておりませんでした」

 と、答弁している。補足するならば、UAVは福島の原発対応だけでなく、東日本大震災における救難や捜索に一度たりとも使用されなかった。なお、徳地防衛政策局長はFFOSの開発費は123.5億円、1セットの調達単価は45億円、FFRSの開発費は44.7億円、調達単価は37億円と答弁している。

 開発と調達に350億円ほどかけた装備が大震災、放射能事故という「有事」にまったく役に立たなかったのだ。ちなみに防衛省のFFRSの政策評価書の事業内容の説明では、「(中略)~NBC(核・生物・化学)攻撃、災害派遣等の多様な事態に有効に対処できる無人偵察機」とあり、事業の目的にも、

 「~災害派遣等の多様な事態における適切な指揮活動を実施するためには、所要の映像情報の早期伝達が可能なシステムを保有する必要がある。無人偵察機は悪天候やNBC汚染下でも現場の詳細な情報をリアルタイムで映像にて得ることが可能である」

 としている。更に事業の達成状況に関しては、システムの構成、偵察能力に関する性能、探知・識別能力に関する性能、標定能力に関する性能、遠隔制御に関する性能に関してこれらを達成していると述べ、「極めて有用性の高い装備である無人偵察機を装備することが可能となった」と、結論づけている。

 だが、防衛省が開発事後の政策評価で自画自賛していた装備が、「大規模災害」、「放射能汚染」という、まさに想定していた状況そのものズバリの事態で、全く使用されなかったのだ。政策評価自体の正当性が疑われても然るべきだ。

 徳地防衛政策局長はFFOSが使用されなかった理由として、

 「地上装置とのデータリンクというものが、万が一途絶したような場合に、直ちにエンジンを停止して降着するような構造になっておりまして、これは二次災害といったようなことを考えますと、被災地における情報収集については不向きであるというのが当時の検討結果でございました」

 と述べている。だがこれは大きな疑惑がある。 ・・・ログインして読む
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筆者

清谷信一

清谷信一(きよたに・しんいち) 軍事ジャーナリスト

軍事ジャーナリスト、作家。1962年生まれ。東海大学工学部卒業。03~08年まで英国の軍事誌Jane's Defence Weekly日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関、Kanwa Informtion Center上級顧問。日本ペンクラブ会員。著書に『専守防衛─日本を支配する幻想』『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『自衛隊、そして日本の非常識』『ル・オタク フランスおたく物語』、共著に『軍事を知らずして平和を語るな』『アメリカの落日―「戦争と正義」の正体』『すぐわかる国防学』など。最新刊に『国防の死角――わが国は「有事」を想定しているか』。

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