2013年06月27日
米国家安全保障局(NSA)とその姉妹機関、英政府通信本部(GCHQ)による過剰な情報収集活動を告発したCIA元職員エドワード・スノーデン容疑者(30)。中国、ロシアが同容疑者の逃亡を助けたことから、事件はオバマ米政権と両国との間の外交問題にまで発展した。
中ロ両国はあえて米国からの身柄引き渡し要請を拒否し、同容疑者の出国を支援した。その背景には、NSAとGCHQが中ロに対して敵対的な情報活動を行ってきた事実があり、両国はオバマ政権に報復したとも言える。
NSAとGCHQの情報工作は日本の外交安保にも深い関わりがある。同盟国としても、外交信義に反するような情報活動に対しては毅然とした態度をとるべきだ。
日本ではもっぱら、NSAが「プリズム」という対テロ秘密工作で、米国市民らの膨大な情報を入手していた問題が議論されている。だが、この工作暴露はそれほどのサプライズだったわけではない。米通信会社やソーシャルメディアがNSAに協力してきた事実は、これまでも米メディアが個別に報道してきた。
実は、ロシアや中国にとって、もっと重大な問題は別の文書で暴露されていた。
第1点は、GCHQが2009年、ロンドンで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会合などで各国代表団の電話や電子メールをひそかに傍受していたこと。
第2点は、オバマ米大統領が2012年10月、サイバー戦略を防御面にとどめず、攻撃面にまで拡大し、攻撃目標をリストアップするよう指示していた新事実である。こうした包括的なサイバー戦略は、今回漏洩したトップシークレットの「大統領政策指令(PPD)20」文書に盛り込まれていた。
前者は、英国の北アイルランド・ロックアーンでG8サミットが開催される直前、後者は米中首脳会談の直前に、いずれもスノーデン容疑者から情報提供を受けた英紙ガーディアンが報道した。同紙はサミットや首脳会談の開催に向けて、関連する秘密文書を暴露した。
下手をすれば、G8サミットも米中首脳会談も台無しにするほど衝撃的な内容だったが、被害国と想定されるロシアや中国は意外に平静に対応し、表面上は事無きを得た形となった。
G20を舞台とした情報工作で、GCHQが標的としたのは、南アフリカとトルコ、さらにロシアだった。
GCHQは、当時のドミトリー・メドベージェフ・ロシア大統領が衛星電話でモスクワと交わした会話内容を盗聴していた。
ガーディアン紙によると、こうして得た情報を「G20の議長国として、望ましい成果を挙げるため、英国政府は適切な時に十分利用できるよう」関係閣僚らに配布した、という。
当時のブラウン英政権が政治的に決断して決定したとみられるが、盗聴で得た情報をリアルタイムで外交に利用するなど、外交信義上あってはならない行為である。
問題はその程度にとどまらない。
こうした情報は
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