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空自のF-35は中国が導入するSu-35に対抗できるか(上)――ロシアが売却する事情とは?

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 6月、筆者は世界最大級の航空ショ-、パリ航空ショーを取材した。目を引いたのが、ロシア空軍の最新鋭戦闘機であるスホーイSu-35だった。筆者がアドバイザーを務める漢和情報センターの取材によると、Su-35を中国が24機導入することを決定した。

 Su-35の性能は我が国が導入中の新型戦闘機、F-35を凌駕する可能性を否定できない。しかもF-35はいまだ開発中の機体であり、対してSu-35は既にロシア空軍に配備が進んでいる。航空自衛隊のF-35が揃うはるか前に中国空軍は多数のSu-35を実戦化するだろう。これは我が国にとって実に由々しき事態だ。

スホーイSu-35=筆者撮影拡大スホーイSu-35=筆者撮影
 Su-35は大型の双発戦闘機で、最大推力14.5トンと高い推力を誇る新型エンジン117Sを2発搭載し、最大速度はマッハ2.25、最大兵装搭載量8.8トン、RVV-SD(R77)中距離ミサイル2発、RVV-MD短距離ミサイル2発を搭載して航続距離は最大3550キロと長大だ。

 機首のレーダーについては、パッシブ・フェーズドアレイ・レーダーのイールビス-EはXバンドレーダーを使用しているがピーク出力が20kw、通常5kwだ。

 通常の戦闘機のレーダーはピーク出力が5kw程度なので、いかに強力かわかるだろう。

 このためRCS(Radar cross-section:レーダー反射断面積)が3m2、つまり普通の戦闘機のような目標なら400kmで探知可能だ。またRCSが0.01m2程度のステルス戦闘機や巡航ミサイルも90km先から探知できる。

 さらに敵機の発する赤外線を探知するIRST(赤外線捜索追跡)システム、OLS-35も装備している。詳細は後に記すが、ステルス戦闘機、F-35も絶対に有利とは言い切れない。

 Su-35をめぐっては本年、中ロが調達のための覚え書きに調印したとの中国メディアによる報道があったが、ロシア当局がこれを否定したという経緯があった。パリ航空ショーでロシア産業界に対して取材したところ、プーチン大統領の政治決定で24機の輸出が決定したという。Su-35の対中輸出に関してスホーイを要するUAC(ユナイテッド・エアクラフト・コーポレーション)社や関係企業は技術が盗用されるとこぞって反対している。にもかかわらずロシア政府は輸出を政治決定したわけだ。

 実際、中国はロシアから導入したSu-27をコピーして国産開発機と称したことがあり、これにロシアが抗議して技術盗用を行わないという覚え書きを交わした。ところがその後もSu-27の艦載機型であるSu-33のプロトタイプをウクライナから調達し、同様にコピーしたことが発覚している。

 また多くの西側諸国の軍需産業界もかつては対中輸出に熱心だったが、現在では技術の盗用を恐れて輸出に慎重になっている。中国人の接近を警戒している企業も多い。ロシア産業界の懸念は極めて妥当なものだと言えよう。

 Su-35がこれまで同様に違法コピーされ、国内のみならず、輸出でもされれば、ロシア軍需産業にとっては大きな痛手だ。また長い国境を接する仮想敵である中国が高性能の戦闘機を入手すれば安全保障上の大きな脅威になる。だがプーチン政権はSu-35の輸出を政治決定した。

 ロシアはなぜそのようなリスクを冒してまで中国に最新鋭戦闘機を売却するのだろうか。 ・・・ログインして読む
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筆者

清谷信一

清谷信一(きよたに・しんいち) 軍事ジャーナリスト

軍事ジャーナリスト、作家。1962年生まれ。東海大学工学部卒業。03~08年まで英国の軍事誌Jane's Defence Weekly日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関、Kanwa Informtion Center上級顧問。日本ペンクラブ会員。著書に『専守防衛─日本を支配する幻想』『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『自衛隊、そして日本の非常識』『ル・オタク フランスおたく物語』、共著に『軍事を知らずして平和を語るな』『アメリカの落日―「戦争と正義」の正体』『すぐわかる国防学』など。最新刊に『国防の死角――わが国は「有事」を想定しているか』。

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