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「将来推計」に独立の第三者機関の設置を

鈴木崇弘 城西国際大学客員教授(政治学)

 政策は、過去や現在の問題を解決することもあれば、これから起きるであろう問題に対処していくものでもある。

 特に後者の政策をつくっていくためには、将来どのような事態が生まれるのかを予想、推計していく必要がある。それを将来推計という。

 将来推計で最もわかりやすいのは将来推計人口だ。人口が将来どのようになるかがわからなければ、税収がどのぐらいになり、年金、医療など社会保障費がどのぐらい必要になるか、あるいは教育を受ける生徒数がどのぐらいになり、教育費にいくらかかるかもわからない。

 このことからも、将来推計が政策をつくるうえでいかに重要かがわかる。逆にいえば、的確に将来推計をつくらないと、適正な政策づくりも難しい。

 そのようななか、東京財団が今年6月、政策形成の基盤となる経済財政等に関する将来推計のあり方を変えるために「国会に独立将来推計機関の設置を」という共同提言を発表した。これは、以下の政策志向性が強い超党派の議員有志9名が中心になって作成したものだ。

<自由民主党>林芳正(参)、宮沢洋一(参)、古川俊治(参)、斉藤健(衆) <公明党>西田実仁(参) <民主党>松本剛明(衆)、松井孝治(参)、階猛(衆) <日本維新の会>桜内文城(衆)

 この提言では、政府内でも政策別、組織別に多種多様な将来推計があるが全体的な整合性がなく、政策担当省庁が自らの政策を正当化するために、その将来推計を利用してきたとの問題点を指摘している(注1)。また、関連する情報が政府内にしか存在しないために、第三者による検証が困難で、蓄積もされておらず、結果として国民への説明責任も果たされていないとも述べる。

 さらに、海外における将来推計を担う独立の第三者機関の近年の傾向も調査し、次のように指摘している。

 「諸外国の取組みやOECDの原則案を通じて見えてくるのは、ややもすれば近視眼的な選択をしがちな現在の政治制度において、将来世代や少数派に配慮した中長期にも整合的な政策決定をするために、経済モデルと数値を用いた中立的な第三者機関による将来推計を積極的に、愚直に活用していることだ。……(中略)……こうした(選挙や景気悪化時期に中長期的問題を先送りしたり、次の政権につけを回すことなどの)懸念に対し、諸外国は将来推計を政策の検討や決定の基盤とし、その方法論や実施、活用体制の改善に愚直に取り組んでいる。これを通じて、財政の健全化はもちろんのこと、政治家がしばしば陥りがちな民主主義の罠を回避する、民主主義の限界を補完する役割をも与えるようになったと思われる」

 また、本提言の事務局でとりまとめ役を務めた元衆議院議員の亀井善太郎東京財団研究員は、次のように述べている。

 「(本提言では、)諸外国が愚直に徹底している以下の4 原則が我が国では実現されていないことを明らかにしました。
・一元化:推計の責任者を一つにすること
・整合化:前提や推計全体のロジックやパラメータ等を一致させること
・透明化:可能な情報をできるだけ開示してその理由なども説明を惜しまないこと
・第三者化:議会や民間などの他の機関による検証と議論を行うこと」

 要するに、現在のように政府省庁に漫然と将来推計と情報づくりをさせていては、民主主義的な観点から、また将来の観点から見たときに、有効な政策形成がなされないと指摘しているのだ。

 そのような問題意識から、本提言は、独立の機関を国会につくることを提言している。このポイントは、縦割りになっている省庁ではなく、国会に機関を設置することである。これによって、政策情報の多元化と全体を統括する政治主導の実現を目指そうとしている。

 またこの提言は、専門家による政策提言ではなく、超党派の現職議員が提言していることが重要だ。この提言が国会で検討され、実際に法制化されることも視野に入れているのである。

 また、この提言はもう一つ重要な意味をもっている。

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筆者

鈴木崇弘

鈴木崇弘(すずき・たかひろ) 城西国際大学客員教授(政治学)

城西国際大学大学院国際アドミニストレーション研究科客員教授。1954年生まれ。東京大学法学部卒。マラヤ大学、イースト・ウエスト・センターやハワイ大学大学院等に留学。東京財団の設立に関わり、同財団研究事業部長、大阪大学特任教授、自民党の政策研究機関「シンクタンク2005・日本」の設立に関わり、同機関理事・事務局長などを経て現職。中央大学大学院公共政策研究科客員教授。著書に『日本に「民主主義」を起業する――自伝的シンクタンク論』『シチズン・リテラシー』『僕らの社会のつくり方――10代から見る憲法』など。

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