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22DDHは護衛艦=駆逐艦か?(上)――実態は「ヘリ空母」

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 来る8月6日、海上自衛隊最大の「護衛艦」、22DDHが進水する。

 22DDHは2010(平成22)年度に建造され、1万9500トン型護衛艦とも呼ばれている。DDHとはヘリコプター搭載護衛艦という意味だが、略号をみれば諸外国でいうヘリコプター搭載駆逐艦である(Destroyer Helicopter:Dが二つ重なるのは慣例であり、DDであれば汎用護衛艦=汎用駆逐艦、DDGであればミサイル護衛艦=ミサイル駆逐艦)。略号を見る限り22DDHは「ヘリコプター駆逐艦」ということになる。

 だが22DDHは、イタリア海軍のカブールやスペイン海軍のファン・カルロス1世などのいわゆる汎用ヘリ空母に性格が近く、これを駆逐艦と称するのは問題がある。10トントラックをセダンと呼ぶようなものだ。

「護衛艦」、22DDHの完成予想図=提供・海上自衛隊拡大「護衛艦」、22DDHの完成予想図=提供・海上自衛隊
 まず22DDHの概要を説明しよう。22DDHは現用のDDH、しらねの後継として建造された。基準排水量は1万9500トンで海上自衛隊の護衛艦中、最大である。すでに就役している16DDH、ひゅうが級の1万3500トンよりも大きい。

 22DDHは各国の空母や強襲揚陸艦同様に全通式の飛行甲板を有している。運用するヘリコプターはひゅうが級が哨戒ヘリ3機、救難輸送ヘリ1機の計4機に対して、22DDHは哨戒ヘリ7機、艦上輸送ヘリなど2機の計9機と、2倍以上のヘリコプターが運用できる。

 また駐機スポットはひゅうが級が4カ所に対して、5カ所(別に艦橋前に1機駐機可能)で、同時にヘリ5機の発着が可能だ。

 エレベーターは甲板前部中央には20×13メートルのものがあり、左舷艦橋後部には15×14メートルのものがある(最大30トン弱の運用が可能)。後部のエレベーターは艦橋の後ろの甲板端に裁ち切り型で設置されているため、エレベーターの面積より大きな航空機、例えば陸上自衛隊の大型ヘリ、CH-47などを昇降することも可能だ。

 乗員は最大で470人で、このうちヘリ要員と司令部要員が併せて270名、その他の乗員は200名となっている。幹部(将校)以外の女性自衛官が90名程度乗り込めるような設備(シャワーなど)も備えられている(幹部は個室なので特別な設備は必要ない)。

護衛艦「ひゅうが」=2012年5月、舞鶴市拡大護衛艦「ひゅうが」=2012年5月、舞鶴市
 ひゅうが級と大きく異なるのは車輛などの輸送用デッキを装備していることだ。

 トラックならば陸自の標準的な3.5トントラック50台を艦内のデッキに収容できる(飛行甲板含まず)。この場合、ヘリコプターを搭載するスペースはなくなる。

 なお、このデッキの高さは地対空誘導弾パトリオット(PAC3)が搭載できる前提で設計されている。ただ戦車などの装軌車輛はデッキ床面がこすれるために搭載することはできない。

 災害派遣などのヘリと車輛などを混合したパッケージ例としては、艦内デッキにUH-60Jを3機、C-47を3機収容、飛行甲板に車輛3.5トントラックを35輛搭載できる。

 またひゅうが級にはない他の艦への給油機能を有している。給油用燃料の容量は航空用燃料と併せて3000キロリットルとなっている。ただし、航空用と艦艇用の振り替えは自由にはできず、比率を変える場合は工事が必要だ。

 また手術室と病室は35床を備えており、長期的な宿泊が可能な収容人員は450名(ひゅうが級は100名)。

 22DDHはひゅうが級同様に旗艦として、艦隊の高い指揮能力、多数のヘリコプターを運用でき、これによる高い対潜水艦戦能力を与えられており、災害派遣や海外での人道援助などにも対応できる。これら能力はひゅうが級を大きく凌駕しているといってよいだろう。

 さらに多くのトラックなど輸送や艦隊への補給が可能となったために、揚陸作戦にも大きな力を発揮し、洋上での基地機能も付加されている。

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筆者

清谷信一

清谷信一(きよたに・しんいち) 軍事ジャーナリスト

軍事ジャーナリスト、作家。1962年生まれ。東海大学工学部卒業。03~08年まで英国の軍事誌Jane's Defence Weekly日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関、Kanwa Informtion Center上級顧問。日本ペンクラブ会員。著書に『専守防衛─日本を支配する幻想』『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『自衛隊、そして日本の非常識』『ル・オタク フランスおたく物語』、共著に『軍事を知らずして平和を語るな』『アメリカの落日―「戦争と正義」の正体』『すぐわかる国防学』など。最新刊に『国防の死角――わが国は「有事」を想定しているか』。

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