政策男子部 塩見哲也
2013年08月29日
夏の高校野球も終わり、熱戦の記憶は人々の頭から徐々に薄れていく。その1カ月前にも全国で繰り広げられた熱戦があったが、もはや世間はその事実をほとんど忘れているかのように秋へと向かう。
「あの人負けちゃったよね」「なんであの人が当選したの?」というレベルの話に価値はないが、与党圧勝の参議院議員選挙で候補者たちが何を提起し、どのような論戦があったのかを振り返ることもまた「政治参加」だ。
今回の連載では、若手のビジネスパーソンと京都の学生らが運営しているMPI(http://www.mpi-net.org/)が展開する研究会「政策マーケティング・セミナー」の内容を紹介する。ビジネスにおけるマーケティングの知見を活用して政策の「作り手」と「受け手」を効果的につなげ、よりよい政策立案を促すというもので、誰でも参加可能。テキストを使って理論的な考察を行ないつつ、現職政治家を交えた実践的な議論も繰り広げている。
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皆さんは7月の参議院選挙後、どのような感想を持っただろうか? ネット選挙運動解禁等でインターネット上では選挙関連の情報のやり取りが活発に見られたものの、実際の投票率の向上には結びつかず、結果も下馬評通り、自民党の大勝ということで「まあ、こんなもんだよね。」と思った方が多いのではなかろうか。
私は、NPO法人MPIで、政策マーケティング・セミナーというマーケティングを中心としたビジネスの知識を政策、NPOといったパブリックセクターに応用するための研究会を主催している。研究会では当然ながら今回の参議院選挙のことが大きな議論となった。開催場所が東京ということもあり、関心を集めたトピックは下記の2つ。
1.山本太郎さんの当選理由
2.鈴木寛さんの落選理由
1.の山本太郎さんの当選理由については、選挙前から話題に上っていたこともあってその当選要因、是非について多くの方が既に論じられている。そこで私は今回、もうひとつの関心事項であった民主党の鈴木寛さんが落選したことに対して、参議院選東京選挙区のこれまでを俯瞰して当落のポイントはどこにあるのかを検討してみたい。
まず誰でも考えるのが、時勢に乗った政党が勝利し、そうでない政党が敗北するのではないかということだ。ただし、これを選挙直前の政党支持率から導き出そうとしてもうまくいかない。
例えば、読売新聞の世論調査では、自民党:44%、民主党:7%、公明党:5%、日本維新の会:5%となっている。
(出所:2013年6月11日 読売新聞http://www.yomiuri.co.jp/election/poll/20130611.htm)
しかし、実際の東京選挙区では民主、維新の候補が落選し、公明の候補が当選している。そこで、東京選挙区が持つ傾向を見るべく、1950年の第2回選挙から、歴代の当選者の政党をまとめてみた。
この結果を1965年以降で、与党と野党に分けると次のようになる。
1965年は与党の当選者が0人であるが、自民党は得票率22%を獲得しており、1議席を獲得することが可能な状況であったと推測される(最下位当選者の得票率12.8%以上を獲得すれば議席獲得)。なお、1995年は公明党としての候補者擁立はないが、公明党を含む複数政党が参画した新進党が魚住裕一郎氏を擁立し、現在、同氏は公明党に所属していることから、実質的に公明党の候補であると考え分類した。
よって東京選挙区では、事実上、与党1人、野党1人、公明党1人の“当確者”がいると考えてよい。それ以外の政党、候補者は残りの1人(2004年以前)または2人(2007年以降)の枠にどう入るかが勝負になってくる。
そこで、残り2枠(1枠)を争う候補者の当落を分ける要因が何であるのかを分析することが重要になる。ここで議論すべき候補者とは、上記の3人を除いた、4人目および5人目の当選者ならびに、その当選者とぎりぎりで競った落選者約2人とする。1990年以降の当落線上候補と、その勝敗は下記のようになっている。
次回以降、各回の選挙結果をもう少し詳しく見ていくことで、参院選東京選挙区の傾向を考察する。
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塩見哲也(しおみ・てつや)
経営コンサルタント。NPO法人MPI政策事業部長。大学在学中から、政治家、経営者に対して政策、ビジネスプランの提言活動をおこなっている。
《MPIとは?》
「次代を担う人材の育成」(New Leaders)、「社会問題の解決策の立案」(New Solutions)、これを通じた「より良い未来の創造」(New Beginning)を目標に掲げ、政策提言・人材育成・震災復興支援といった活動を展開している。
ウェブサイト http://www.mpi-net.org/
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