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「平和の祭典」オリンピックに存在意義はあるか?

清谷信一 軍事ジャーナリスト

 東京でのオリンピックが決定した直後から9月21日まで取材でロンドンにいたのだが、周囲から「東京でのオリンピック開催、おめでとう」と言われ、日本人としての感慨などを期待されることが多く閉口した。

 東京オリンピック開催で喜んでいる方には申し訳ないが、筆者はオリンピックにまったく興味がない。いや嫌いである。その社会的な意義すら疑っている。筆者は昔からオリンピックのテレビ中継も見なかったし、日本の選手が勝とうが負けようが興味がなかった。その意味では完全な「非国民」で「愛国心」の欠片(かけら)もない人間である。

 筆者にとってオリンピックとは、金儲けと国威発揚の政治イベントでしかない。そもそもスポーツが体にいい、オリンピックはスポーツの振興になり、国民の健康増進につながるなどというのは詭弁であり、牽強付会だと思っている。

 オリンピックが利権まみれだということは多く報道されており、今さら筆者が指摘することでもあるまい。かつては「アマチュアの祭典」と呼ばれていたが、実際はプロ選手ばかりである。これを民間の興行師がやるのであればとやかく言わないが、税金を投じて行う必要があるのだろうか。それならばプロレスの興行にも公金を投じるべきだろう。

 最近、東京オリンピックでこんなに儲かる、という経済効果の皮算用がなされているが眉唾である。かつての東京オリンピックでは新幹線も高速道路などのインフラも整備されておらず、オリンピックには大きな経済効果があった。だがすでに我が国はインフラが整っている。オリンピックのために土建屋に使うカネがあるのならば、既存のインフラの維持や改修にこそ使うべきだ。

 日本人には自覚がないようだが、我が国はまごうことなき経済大国である。今さら国家的な興行を打ってあぶく銭を稼ごうという魂胆が浅ましい。これからインフラ整備が必要なトルコあたりに譲るのが経済大国の矜持というものだろう。

 スペイン経済はバルセロナオリンピックがきっかけでバブルになり、それが昨今の経済危機を招いたともいえる。それでまた立候補しようというのだから開いた口が塞がらない。オリンピックをやれば儲かるとは限らないだろう。

 また「平和の祭典」というのもキレイごとだ。オリンピックは政治と無関係ではない。オリンピックを大々的に国威発揚に利用したのはナチス・ドイツだが、聖火リレーという「ドラマ」を作ったのは彼らのベルリン・オリンピックからだ。ナチスを毛嫌いする欧州人が何故いまだに聖火リレーを有難がるのか不思議である。

 スポーツに国境はないとか、政治と関係ないというのもこれまたキレイごとだ。ソ連のアフガン侵攻後のモスクワ・オリンピックは我が国を始め、多くの西側諸国がボイコットした。まじめに精進してきた選手こそ「政治の被害者」であり、いい面の皮である。

 オリンピックが平和の祭典であり、アフガン侵攻がいけないのであれば、政治的な自由のない中国、北朝鮮、キューバ共産国やジンバブエなどの独裁国家のオリンピック参加を認めるべきではない。

 特に中国はチベット人など少数民族を弾圧しているのでなおさらだ。これを理由に東京オリンピックでは、中国などの「札付き国家」を排除してはどうか。アフガン侵攻には反対してボイコットし、少数民族を弾圧し続けている中国の北京オリンピックには両手を挙げて賛成し、参加したのはどのようなロジックなのだろうか。

 これらの国のオリンピック参加は国威発揚に利用され、「札付き」政権の延命に力を貸すことになる。オリンピックが政治と無関係というのであれば、どんな独裁国家や非人道行為をしている国家がオリンピックに参加し、国威発揚に利用してもそれを拒否する理由はなくなる。

本格的なスポーツは体に悪い

 スポーツが体にいいというのは迷信の類である。

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筆者

清谷信一

清谷信一(きよたに・しんいち) 軍事ジャーナリスト

軍事ジャーナリスト、作家。1962年生まれ。東海大学工学部卒業。03~08年まで英国の軍事誌Jane's Defence Weekly日本特派員。香港を拠点とするカナダの民間軍事研究機関、Kanwa Informtion Center上級顧問。日本ペンクラブ会員。著書に『専守防衛─日本を支配する幻想』『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』『自衛隊、そして日本の非常識』『ル・オタク フランスおたく物語』、共著に『軍事を知らずして平和を語るな』『アメリカの落日―「戦争と正義」の正体』『すぐわかる国防学』など。最新刊に『国防の死角――わが国は「有事」を想定しているか』。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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