2013年10月03日
9月10~13日の4日間にわたってロンドンのExCeL見本市会場で、国際軍事見本市、DSEi(Defence Security Exhibition)が開催された。DSEiは隔年で開催される英国の国際的な見本市で、主に陸海を中心とした軍事やセキュリティの見本市だ。
今回、この見本市には防衛省から左藤章前政務官を長とする7名のデリゲーションが訪れていた。このデリゲーションはその先週に行われたポーランドの軍事見本市、MSPOも視察していた。
また経産省の航空機武器宇宙産業課の和久田肇防衛産業企画官も視察に訪れ、セミナーで公演した。野党からは維新の会の中丸ひろむ衆議院議員も視察に訪れていた。昨今の武器禁輸緩和と防衛産業の輸出の振興が現実味を帯びてきているからだ。
その他、陸海自衛隊からも参加があった。
陸自は自由に見て回るためか、ホスト国のアテンドがつくデリゲーションでの参加ではなかった。だが、商社にアテンドの世話を焼いてもらっていたようだ。情けない。
かつて筆者は石破茂氏が防衛庁長官の折、自衛隊の見本市視察で特定の商社にアテンドを頼むのは問題ではないかと指摘した。石破氏はこれをやめるように指示したはずだが、いつの間にか復活していたらしい。しかも会場までは背広で来て、現地で制服に着替えている。市ヶ谷に出勤するような気分なのだろうが、まるでコミケのコスプレーヤーだ(コミケでは主催者がトラブルを未然に防ぐためにコスプレ姿のまま会場に来たり、帰ったりすることを禁じている)。
航空ショーに出展する中小企業が増えつつあるが、この種の見本市では日本企業としては初めての試みだ。左藤前政務官らもこの小さなパビリオンを訪問し、熱心に説明を聞いていた。
我が国の中小企業で海外の防衛産業や航空宇宙産業に進出を志す企業は少なくない。だが、国内の防衛産業は市場が小さい上に、既存企業が新規参入を阻害しているので参入は困難だ。
例えば世界第2位のアラミド繊維メーカーであり、国内の大手繊維メーカーである帝人ですら、東レと東洋紡に阻まれて参入ができない。同社の社員は防衛市場への参入に無駄なエネルギーを使うより、世界の市場で勝負する、と筆者に語っている。
中小企業ならばなおさらだ。防衛省自体が消極的だし、防衛産業は系列化されており、主契約の大企業は、付き合いのある下請けを選ぶ。実際に既存の防衛産業の企業が1億円かかるものを、中小企業が1千万で作れても防衛省に売り込むことは難しいという。
国内の官公庁や大手防衛メーカーと話をするよりも、海外の見本市に出て海外のバイヤーやメーカーと話す方が話が纏(まと)まるのが早いし、発注数も大きいという。自衛隊が年に数個しか買わないようなものでも、途上国では数百個単位で調達するケースがあるそうだ。
また外国のメーカーは当の日本企業が想像しなかった自社の技術の使い方や用途を提案したり、模索してくれるという。海外で実績を積んで、これをテコに日本の防衛市場に参入しようと考えている中小企業も存在する。
武器禁輸緩和というと大型飛行艇US-2など派手なものが目につくが、このような大型の完成品を売り込むのは政治や外交の関与が必要だし、実現が極めて難しい。
またC-2輸送機の民間機転用も話題になっているが、これも非常に難しい。ただでさえも機体の型式証明や耐空証明をとるのは非常に大きなコストがかかる。すでに機体が完成した後に耐空証明や型式証明をとるのはなおさらコストがかかる。
故にC-2がライバル視しているエアバスのA400Mは開発中から耐空証明や型式を取得している。今後メーカーの川崎重工がリスクを負ってまで、C-2の民転機を開発するかどうかは極めて疑わしい。大手メディアの楽観的な報道を安易に信じるべきではない。
むしろ、防衛、航空宇宙、セキュリティなどの国際市場に参入するのであれば、コンポーネントや部品、素材などの方がはるかに有利だ。完成品の開発には実戦のノウハウなどが必要だからだ。
例えば防弾チョッキなどは非常に高度な実戦からのフィードバックや経験がものをいう。だから実戦も開発実績もない日本のメーカーは参入が難しい。だが素材である防弾繊維やセラミックなどであれば、メーカーからの仕様や技術要求を満たすだけでよく、技術があれば参入は比較的容易である。
このような分野では、技術力、品質が高く、納期を守る日本の中小企業に飛躍の場があるだろう。国内では納期を守るのは当たり前、常識と思われているが、外国ではそうではない。従業員が徹夜までして納期を守る日本企業は特殊なのだ。
ただ漫然と既存の国内防衛産業で下請けをしている企業には、海外進出は難しいだろう。この手の下請け企業は防衛依存度が元請け企業よりもはるかに高い。得てしてこの手の下請け企業は仕事が減って、売り上げが落ちているが、ガンバリズムだけで乗り切っている。
これを「美談」として報じる向きもある。だが、
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